新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

197: キジハタ

スズキ目スズキ亜目ハタ科ハタ亜科ハタ族マハタ
学名:Epinephelus akaara (Temminck and Schlegel)
英名:Redspotted grouper [原], Hong Kong grouper, Red grouper

地方名あこう(関西地方)、あずきます(愛知/三重)など(ちなみに今回の店頭表示は「アコウ鯛」)。京都産の体長約25cmの天然個体から射出骨付きで摘出した左右の標本。これまでに紹介したハタ科の「魚のサカナ」の中では、アカハタのものに最も良く似ているが、「雉子羽太のキジハタ」では、1)肩甲骨孔がより大きいこと、2)第4射出骨の根元部の烏口骨がほぼ垂直に切れ込むこと、3)烏口骨の上方突起(『背鰭』)部分がより高いこと、4)そのために烏口骨の『嘴』部のテーパーがきつく見えることなどを相違点として挙げることが出来る。また他のハタ科の「魚のサカナ」と同様に烏口骨の上方突起部が肩甲骨/烏口骨が作る面に対して垂直方向にカールしながら立ち上がるものの、その度合いはさほど高くない。


尾鰭に暗色の斑点がなく(写真下段左)、体側の斑点は赤橙色で明瞭、体背縁の黒斑は一つだけ(写真下段右)と、外見上良く似ているためにしばしば混同される「ノミノクチ」の特徴とは明らかに異なっていたことから「キジハタ」以外は考えにくい魚であったが、念のため何時も通り「日本産魚類検索 全種の同定」の『同定の鍵』を辿って確認。1)背鰭棘条数が「11」、2)臀鰭軟条数が「8」、3)背鰭棘条部が前方で少し高くなる、4)尾鰭後端が丸い、5)体の地色は褐色で、体側部に赤橙色の斑点が密に分布する、6)背鰭基底部に大きな黒色斑が1つ存在しているなどの形質は、キジハタのものと矛盾しない。

魚喜神戸そごう店で購入。少なくとも関西地方では「高級魚」として認識されている魚で、最近では養殖も試みられている模様。鮮魚の体表は粘液で覆われヌルヌルしている。今回の個体は活け〆ものではなかったが、非常に新鮮だったので刺身に。コリコリしているが固すぎない、心地よい食感を楽しんでいると上品な旨味・甘みが口一杯に広がってくる。今回は晩秋/初冬ということで少々時期外れの感はあったが、それでも非常に美味。


注:2番目の『同定の鍵』である「臀鰭軟条数」は「8」または「9~10」で分けるようになっているが、同書のキジハタの形質を確認すると、「A III, 8~9」即ち「臀鰭は3棘8〜9軟条」との記述がある。これが「8」ならば今回のようにキジハタに辿り着くが、もし「9」ならば、可能性がトビハタ/アズキハタ/マハタマハタモドキの4魚種に絞られてしまう。つまりこの「臀鰭軟条数」が「8」または「9~10」で分けるという『鍵』は成立しないことになる、、、ということで第3版では「要改訂」かと。