新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

379: タカハヤ

コイ目コイ科ウグイ亜科ヒメハヤ属
学名:Phoxinus oxycephalus jouyi (Jordan and Snyder)【注】
英名:Upstream fatminnow [原], Southern fat minnow(FishBase英名表記なし)

標準和名アブラハヤと区別されずに「あぶらはや」と呼ばれることが多いと思われる(その他の地方名としては、あぶらめ、うき、くそむつ、どろばえ、もつご等)。今回紹介するのは、長野県下伊那郡を流れる阿知川で釣獲された全長約15cmの個体から摘出した左右の「魚のサカナ」。中烏口骨付き。写真左の標本は、烏口骨の『嘴』部(「魚のサカナ」の『尾』に相当)の先端が少々欠損している。

写真上の右側の標本を両側から観察したもの。「高鮠のタカハヤ」の形状は、全体的に横方向にスラッと長く、烏口骨の『嘴』部の先端が鋭角的になっていることから、これまで紹介してきたコイ目の「魚のサカナ」の中では、オイカワウグイホンモロコなどのものと比較的似た印象を与えるもの。ただしタカハヤの「魚のサカナ」の中烏口骨は、他のものとは大きく異なる形状で、丁度リボンが棚引いているかのように大きく波打っている(写真左)。烏口骨の上方突起部(『背鰭』に相当)はあまり高くなく、比較的大きめの孔が1〜2個開いている。



写真撮影時は『日本産魚類検索 第2版』のコイ科の検索キー(『第3版』も同一)を辿り、1)背鰭の最長鰭条に鋸歯縁がない(写真下段左)、2)臀鰭起部は背鰭基底後端より後にある(前にはない/写真下右)、3)眼の上縁は吻端よりも上(写真中段左)、4)口に髭はない(写真中段左)、5)腹縁は丸い(ように見える)、6)生時、眼の上縁は銀白色(と思われる/写真中段右)、7)臀鰭の分枝軟条数は6(写真下段右)、8)口は吻端にある(写真中段左)、9)胸鰭は垂直位、10)背鰭と尾鰭に顕著な斑紋がない(写真下段左および写真下左)、11)口は著しく小さくなく上向きではない(写真中段左)、12)側線は完全で尾柄部まで達する(写真下左)、13)鱗は小さく(写真下左右)、側線鱗数は72(ほど)、14)臀鰭起部は背鰭基底後端とほぼ同位置(写真下右)、15)上顎の先端は吻端より後ろ(写真中段左)、16)喉部は角張らずになめらか(写真中段左)、17)尾柄高(1.2cm)は高く、頭長(2.4cm)の50%、18)側線上方の横列鱗数は16、19)体側の縦帯は不明瞭(写真下右)、20)側線より下の体側の暗色斑点は明瞭(写真下右)、21)尾鰭基底中央に暗色斑がない(小さな暗色斑があるようには見えるが/写真下左)、22)尾鰭後縁の切り込みは浅い(写真下左)などの形質からタカハヤであると判断。写真では眼球が白く映っているが、これは冷凍されていた個体を半解凍状態で撮影しているため。

雰囲気の似たヤチウグイとは形質15および16と生息地(ヤチウグイは北海道やサハリンで生息するのに対し、タカハヤの生息地は本州の静岡県福井県以西)で、アブラハヤ/ヤマナカハヤとは、形質17から22(アブラハヤ/ヤマナカハヤでは、尾柄高が低く頭長の48%以下、側線上方横列鱗数が20以上、体側の縦帯は明瞭、側線より下の体側の暗色斑点は不明瞭、尾鰭基底中央に暗色斑がある、尾鰭後縁の切り込みはやや深い。またアブラハヤ/ヤマナカハヤは、尾柄高が頭長のそれぞれ40%以上/38%以下であること、山中湖と本栖湖に分布しない/分布することで見分けられるとのこと)。

筆者の父親が2012年夏〜初秋(正確な日時は不明)に長野県下伊那郡の阿知川で釣り、「魚のサカナ」摘出用にと冷凍保存しておいてくれたもの。今回は標本を摘出しただけで味見はしなかったが、ネット上の意見では「不味」というのが大多数(『原色甲殻類検索図鑑』でも不味と明記)。ただし「意外に美味い」などの意見も散見されるので、将来的に新鮮な個体がまとまって手に入ったら色々な料理を試してみるつもりである(まあタカハヤが市場流通するとは思えないので自分で釣るしかなさそうだが)。

【注】FishBaseでは、学名をPhoxinus jouyi (Jordan and Snyder)として『種』扱い。