新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

380: カナド

スズキ目カサゴ亜目ホウボウ科カナガシラ属
学名:Lepidotrigla guentheri Hilgendorf
英名:Redbanded searobin [原]

愛知県一色漁港産の全長約22cmの個体から摘出した左右の「魚のサカナ」の標本。エタノール浸漬中に少々黄変してしまった。写真右は、写真左の右側の標本をより近くから撮影したもの。「金戸のカナド」の形状は、これまでに紹介してきたホウボウ科の「魚のサカナ」に典型的と言えるものであるが、烏口骨下縁の擬鎖骨と結合しているラインが比較的長くなっているために、同じカナガシラ属のカナガシラオニカナガシラのものよりも、属が異なるホウボウ(ホウボウ属)のものの方により似ているのが興味深い。

カナドの「魚のサカナ」の第1射出骨(写真上左)と烏口骨(写真上右)には小孔が開いているが、第2、第3、第4射出骨にはこのような小孔は確認できない(少なくとも目視レベルで)。第2〜第4射出骨にも小孔が存在する同じカナガシラ属のカナガシラやオニカナガシラの「魚のサカナ」とは異なる部分と言えるが、この特徴(小孔は第1射出骨と烏口骨のみ)は、面白い事にホウボウの「魚のサカナ」でも見られるもの。ホウボウ科内の系統関係がどの程度詳しく解析されているのかは分からないが、もし分子系統解析のデータなどが存在しているのならば、カナドとホウボウがどのくらい近い(あるいは遠い)位置にあるのか是非確かめたいものである。



日本産のカナガシラ属の魚は11種類が知られているが、各魚種の表徴形質(要するに見分けるためのポイント)が少々分かりにくいため、筆者のような素人レベルでこれらの魚種を見分けるのはなかなか難しいというのが実際のところ。その中にあって、カナドは背鰭第2棘が著しく長くなる(写真下段左)ため、外見からも比較的見分けやすい種である(ただしこの棘は網に引っ掛かるなどして折れている場合もあるので注意)。また尾鰭に2本(および尾柄部に1本)ある明瞭な赤色帯(写真下右)は店頭でトレイなどに盛られた状態でも判別しやすく、その上で第1背鰭後方に赤色円斑がない(写真下段左)こともカナドを見分ける時の参考となる。カナドの胸鰭内面の模様を『日本産魚類検索』からそのまま引用すると「下方に、虫食い状青色斑を含む1大黒斑があり、中央部は黄緑色、縁辺は淡い赤褐色」(写真下左)。ちなみに胸鰭内面の模様がカナドのものと比較的良く似たオニカナガシラでは、その縁辺が淡灰色〜青色となることで区別できる。

写真撮影時は『日本産魚類検索 第2版』の同定の鍵(『第3版』も同一)を辿り、1)第2背鰭は8棘15軟条で、基底には小棘のある骨質板がある、2)頬部に顕著な隆起線はない(写真中段左)、3)吻棘は顕著で、基底部は前に突出する(写真中段右)、4)吻背面は少々くぼむ(写真中段左)、5)側線有孔鱗数は60(明らかに70以上はない)、6)胸鰭は普通で、その後端は第2背鰭中央下に達しない、7)吻棘は多くの小棘からなる(写真中段右)、8)胸鰭遊離軟条先端(写真下段右の青線)は、腹鰭先端(同赤線)から眼径の1/2以内に達する(ように見える)、9)背鰭第2棘は第1棘より著しく長い(写真下段左)などの形質からカナドであると判断。

2012年12月に三河一色さかな村にある「カネ長鮮魚店」で購入したもの(ほぼ同サイズのカナドが12匹盛られて450円)。今回は見るからに新鮮な個体であったので刺身と唐揚げに。刺身にすると、もっちりとした歯ごたえ。ホウボウほどではないが甘み旨味がある。また唐揚げにすると、身質も良く旨味もある。どちらの料理法でも美味。