新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

383: カワラガレイ

カレイ目カワラガレイ科カワラガレイ属
学名:Poecilopsetta plinthus (Jordan and Starks)
英名:Brick sole [原], Tile-colored righteye flounder

愛知県西尾市にある一色漁港産の全長約12cmの個体から摘出した左右の「魚のサカナ」。写真左は、上が有眼側、下が無眼側と考えられる標本。写真右は、無眼側の標本を拡大して撮影したもの。今回「魚のサカナ」を摘出するために、何時ものように冷凍保存しておいたカワラガレイ(丸のまま)を熱塩水中で10分程度煮たが、その間に筋肉組織はおろか、骨と骨を繋ぐ軟骨組織まで崩壊し、脊椎骨を含めた体中の骨という骨が文字通りバラバラになってしまった。これらの骨の山の中から計4個の肩甲骨と烏口骨を「救出」したものが上の標本である(同時に耳石も救出)。ちなみに有眼側/無眼側それぞれにおける肩甲骨/烏口骨の組み合わせは、i) 肩甲骨と擬鎖骨が結合していたと考えられる位置、ii) 骨の厚み、iii) 接合部の形状、iv) 烏口骨の『背鰭』部分が湾曲する方向などから総合的に判断したが、この「再構成」が間違っている可能性もあるので念のため。

これまで紹介してきたカレイ目の「魚のサカナ」は、全体的には似たような雰囲気を持ちながら、実際に各部分ごとに他の種のものと比較すると近縁種間でも形状に比較的大きな差異が観察されることが多かったが、今回の「瓦鰈のカワラガレイ」もやはり「独特」であると言える形状。肩甲骨部分はアブラガレイのものと比較的似ているが、無眼側の烏口骨の上部突起(『背鰭』に相当)辺りが『庇』状に比較的大きくせり出していること、烏口骨下部が丸く湾入していること、烏口骨の『嘴』部(『尾』に相当)が曲線的に下方に伸びていることなどはカレイ目の他の種のものでは観察されなかった特徴である。

有眼側(左)および無眼側(右)の標本を反対側から観察したもの。カワラガレイの「魚のサカナ」は全体的に薄いもので、特に肩甲骨の後縁と烏口骨の前縁(両者の接合部)は、『背』側で折れ曲がり薄い骨の2層構造を作っていた。



『日本産魚類検索』のカレイ目の「科の検索」からスタート(『第2版』ではp.100〜『第3版』ではp. 134〜)。1)腹鰭は棘がなく6軟条(写真下左)、2)左右の鰓膜は癒合している、3)前鰓蓋骨に遊離縁がある、4)胸鰭は顕著(写真下段左右の赤丸)、5)眼は体の右側にある(写真中段左)、6)無眼側に胸鰭がある(写真下段右)、7)無眼側の側線は痕跡的で見えにくい(写真下段右)という形質からカワガレイ科であると判断できるが、実は日本近海に生息するカワラガレイ科の魚はカワガレイのみ(つまり1科1属1種)である。カワラガレイの項に記載された 8)尾鰭に2個の大きな黒斑がある(ように見える/写真下右)、9)有眼側の側線は胸鰭上方で上に大きく湾曲する(写真下段左の赤線に注目)などの形質も確認。無眼側の頭部や腹部には多数の皮弁(と言えるか分からないが)がある(写真中段右)。カワラガレイの仲間は、かつてはカレイ科に分類されていたが、上の形質7)からカレイ科から分離され、現在ではカワガレイ科とするのが一般的であると筆者は理解している。ただしWikipediaカレイ」などでは、「カレイ科カワラガレイ亜科」表記になっている。

2012年12月に「三河一色さかな村」の高橋水産(高橋カンパニー)で入手。前エントリーで紹介したアンコウを購入した際に、その内の1匹が口にくわえていたものだが、実際に「エサ」として摂食したものなのか、あるいは網の中でたまたまそのような状態になってしまったのかは不明。この個体の鮮度はまずまずに見えたが、1匹だけということでそのまま冷凍保存。「魚のサカナ」調製時に「塩煮」を試食しようと思っていたのだが、上述したように塩水中で煮ただけで身も骨もバラバラになってしまったので、残念ながら現時点では味に関するコメントはできない。ただしネット上の情報によれば、一部地域では干物にして食べられている模様。