新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

169: ホウライヒメジ

スズキ目スズキ亜目ヒメジ科ウミヒゴイ属
学名:Parupeneus ciliatus (Lacepède)
英名:Blacksaddle goatfish [原], Whitesaddle goatfish, Cardinal goatfish, Diamondscale goatfish, White-lined goatfish

地方名アカカタカシ(沖縄)、メンドリ(和歌山/オキナヒメジと区別していない模様)。沖縄産の体長約40cmの個体から摘出。肩甲骨に複数の孔が開いているなど、全体的な形は前回紹介したオオスジヒメジのものに良く似ているが、肩甲骨先端部がさほど曲線的でなく少々太めな印象であること、烏口骨根元部分の高さが低め(=より幅広に見える)なこと、烏口骨上方の突起部分がより幅広に見えること(下記参照)、烏口骨の『嘴』部分が直線的に非常に長く伸びることなどが相違点として挙げられる。

同一個体から取り出した左右の「魚のサカナ」の肩甲骨部分を拡大。上記した通りオオスジヒメジ同様に肩甲骨に複数の孔(数は左右とも「4」)が開いているが、その位置は左右の標本で全く異なる。こんなにバリエーションがあっても神経や血管のネットワークを正確に作り上げることが出来るとは不思議。ちなみに写真左の標本の左下にある三角形の孔は「蓬莱比賣知のホウライヒメジ」を擬鎖骨から外す時に少々剥離してしまった部分で、実際の骨にはないもの。

オオスジヒメジのものと同様に烏口骨の『背鰭』部分は写真手前方向に起き上がるが、その角度はオオスジヒメジのものよりも低めなため上から見ると幅広に見える。また上方突起の最先端部の角は角張る。


「日本産魚類検索 全種の同定 第2版」の『同定の鍵』を辿り、1)第2背鰭が鱗で覆われない、2)顎歯が大きく1列に並ぶ、3)体側に暗色斑がない、4)尾柄部に黒褐色斑がない、5)顎下のひげが鰓蓋後端に届かないという形質で、ウミヒゴイ/ホウライヒメジ/オキナヒメジの3種のどれかであることが確定。更に6)臀鰭の前縁長と基底長がほぼ同じ(写真下段左)なので、オキナヒメジは除外できる。ここで尾柄部の暗褐色斑紋(横帯)がなければウミヒゴイ、斑紋があればホウライヒメジとなるが、この斑紋は不明瞭な場合があるとのこと。今回の魚は写真上を見る限り、かなり不明瞭ながら側線下まで伸びる暗色斑が認められ、その前の領域が少々白っぽくなっているようなのでオキナヒメジであると判断した(もし同定が間違っている場合はご指摘ください)。ちなみに下顎の触鬚(ひげ)は黄色(写真下段右)。

今回は刺身とマース煮に。刺身は少々柔らかめだったが、旨味成分がかなり多く美味。マース煮も火を通すと身が適度に固まり、また皮目からラー油のような色をした赤い油滴が大量に出るくらい脂も乗り美味。お取り寄せの「おまかせ沖縄鮮魚セット」に入っていたもの。