新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

228: アマミスズメダイ

スズキ目スズキ亜目注1スズメダイスズメダイ亜科スズメダイ
学名:Chromis chrysura (Bliss)
英名:Whitetail reeffish [原], Robust puller, Stout chromis, Stout-body chromis, Stoutbody puller

沖縄名クルビラー。沖縄産の全長約17cmの雄個体(白子を持っていた)から擬鎖骨付きで摘出した「魚のサカナ」の標本。スズメダイのもののように、烏口骨下部とそこに接する擬鎖骨側部分の一部が抉れ孔が開いているように見えるが、「奄美雀鯛のアマミスズメダイ」ではその形が「ティアドロップ」型(=丸くない)。またこの孔の後方にも小孔が1〜数個存在する。またアマミスズメダイのものの方が、前後方向に縮まったように幅が短い(特に烏口骨本体)。写真右は写真左右側の標本の拡大図。烏口骨上部の『嘴』の先端が丸くなっている(スズメダイのものは尖る)こと、この部分に小孔が開いているのが分かる。ただし反対側の標本ではこの孔は観察されなかった。

写真上左側の標本から擬鎖骨を外して「魚のサカナ」の両側から観察したところ。こちら側の標本の烏口骨上部の『背鰭』部分の前縁は少し抉れている。肩甲骨と烏口骨の下部が作るラインはスズメダイのものほど直線的でなくギザギザ。烏口骨の『嘴』部分は下方に向かってより長く伸びる。



「日本産魚類検索 全種の同定 第2版」の『同定の鍵』を辿り、1)主鰓蓋骨などの後縁に長い棘列がない(写真中段左)、2)眼窩後半内側に乳頭状突起がない(写真中段左)、3)尾鰭上下端の前尾鰭条が棘状(上下各2本/写真下段左の赤丸)、4)眼下骨系の縁辺が円滑(写真中段左)、5)体の後半部に黒色横帯がなく、暗色と淡色の境界がある(写真下段左)、6)眼上部から後頭部の各鱗に付属小鱗なし(写真中段右)、7)胸鰭基底に大きな黒色斑あり(写真下段右)、8)背鰭は13棘14軟条、9)暗色と淡色の境界は背鰭基底後端(写真下段左の緑線)より前、10)側線有孔鱗数が「17」などの形質からアマミスズメダイであると判断。ちなみにアマミスズメダイスズメダイの仲間の内では比較的大型種であるとのこと。

糸満おさかなセンター内の優秀(ゆたしく)で購入(当日は150円/100g注2)。アマミスズメダイばかり入れられた店頭のトロ箱から試しに1匹だけ抜き取ったもの。今回は2枚に下ろして刺身と塩焼きに。刺身は脂の乗りが良く、そこからくる甘みを強く感じる。なかなかの美味。骨付きの塩焼きは水分が程良く飛び、身がブリブリになる。こちらは非常に美味い。正直なところ1匹だけじゃなくてもっと購入しておけば良かったと思った次第。

【注1】「日本産魚類検索 全種の同定 第3版」では「スズキ目スズキ亜目」として掲載されているが、「Fishes of the World, 4th Edition」(2006)では「スズキ目ベラ亜目」。ただしベラ亜目の単系統性に関しては異論も多い模様。

【注2】筆者が確認した限り、沖縄の鮮魚店では量り売りの場合は「100g○○円」という表示だった。確かに「1キロ1,500円」と表示されているより安く感じさせるかも。