新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

344: ソラスズメダイ

スズキ目スズキ亜目スズメダイスズメダイ亜科ソラスズメダイ属
学名:Pomacentrus coelestis Jordan and Starks
英名:Heavenly damselfish [原], Neon damsel, Blue damselfish, Yellow bellied damsel

静岡県沼津市にある木負堤防での釣りもので、全長約7cmの抱卵雌個体から摘出した左右の「魚のサカナ」。写真右は、写真左の左側の標本を反対側から観察したもの。標本調製時に肩甲骨と烏口骨の結合部の下半分が剥がれてしまった。「空雀鯛のソラスズメダイ」は、烏口骨の上方突起部(『背鰭』)の前縁が多少後方に傾くことなど、これまでに紹介した2種のスズメダイ科の「魚のサカナ」の中では、どちらかと言えばアマミスズメダイのものの方に似ているような印象だが、実際に全形を比較すると様々な相違点が見出せる。特に肩甲骨部分は大きく異なり、ソラスズメダイのものの前縁は垂直方向に直線的(ただし途中に『鼻』のような突起がある)で、肩甲骨の下部は丸く膨出する。また烏口骨本体の下縁は少々波打ち、上方の『背鰭』部から『嘴』部にかけての上縁のラインは直線状。『背鰭』部の下方には極小さな孔が確認できる。

写真上は「空雀鯛のソラスズメダイ」を擬鎖骨から外す前に撮影したもの。これまでに紹介したスズメダイ科の「魚のサカナ」と同様に、烏口骨下部とそこに接する擬鎖骨側部分の接する線の途中が抉れて孔が開いているように見える(写真の赤丸)。ただし孔自体は比較的小さい。



「日本産魚類検索 第2版」の同定の鍵を辿り、1)主鰓蓋骨・間鰓蓋骨・下鰓蓋骨後縁は円滑か、棘があっても小さく鋸歯状、2)体の縦列鱗数は25、3)眼窩後半の内側に乳頭状突起がない、4)尾鰭上下端の前尾鰭条は棘状ではない、5)前鰓蓋骨後縁は鋸歯状(写真下段右の緑四角)、6)両顎歯は2列(写真下段左)、7)両唇は肥大しない(写真中段左・下段左)、8)頭部の鱗域は眼の前縁にしか達しない、9)尾鰭上下葉は(顕著に)伸長しない(写真中段右)、10)眼下骨上に鱗はない、11)尾部と体は明瞭に色分けされない(写真中段右)、12)胸鰭基底の黒色斑は小さく、胸鰭基底の上半分を被う程度(写真中段左の赤四角)、13)涙骨と眼下骨の間に顕著な欠刻がない(写真下段右の赤四角)、14)眼下骨下縁は円滑(写真下段右)などの形質を確認してソラスズメダイであると判断。また小西英人著「釣魚1400種図鑑」では、鰓蓋上部の濃青色斑(写真中段左の緑丸)を特徴の1つとして挙げている。

海中では美しく青色に輝いているソラスズメダイだが、釣り上げるとすぐに体色を黒〜暗褐色に変えてしまう(写真上左/標本を摘出したものとは別個体の写真)。死んでからしばらく経つと、体側に青色が再び現れる(写真上右)のが興味深い。

2012年8月に静岡県沼津市の木負堤防で釣り上げたもの(ちなみに餌はアミエビ)。しばらく冷凍保存し「魚のサカナ」を摘出するために丸ごと塩ゆでにしたものを試食。身に旨味はそこそこ含まれるが、同時に少々クセ(エグ味)のようなものも感じた。鮮度の問題という可能性もあるが、個人的にはさほど美味くないな、、、という印象が残った。