新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

370: ハガツオ

スズキ目サバ亜目サバ科サバ亜科ハガツオ族ハガツオ属
学名:Sarda orientalis (Temminck and Schlegel)
英名:Striped bonito [原], Oriental bonito, Indo-Pacific bonito

地方名きつね、きつねがつお、さばがつお、しまがつお(ただし標準和名シマガツオは別の魚)、すじがつお、すじまんだら、はあがつ、ほうせんなど。今回紹介するのは長崎県産の全長約53cmの雌個体(小さい卵巣を確認)から摘出した左右の「魚のサカナ」。射出骨付き。写真右は、写真左の左側の標本から射出骨を外して、反対側から観察したもの。「歯鰹のハガツオ」は、スズキ目サバ亜目の「魚のサカナ」としては比較的薄手であるが、肩甲骨が細長い、烏口骨上方の『背鰭』部が立派に突き出す、烏口骨本体と『嘴』部の間が深く湾入するなど、この亜目の「魚のサカナ」の特徴を共有している。これまでに紹介したものの中では、マグロの仲間(クロマグロビンナガメバチキハダ)やカツオのものと良く似た(反対にマルソウダヒラソウダのものとはかなり異なる)印象。ただし「歯鰹のハガツオ」では、肩甲骨孔がかなり小さい。また本稿の標本では、烏口骨の『嘴』部の先端が『針』のように尖っている。

ハガツオの「魚のサカナ」の烏口骨『嘴』部背側は中程で『庇』のように折れ曲がる。そのために写真上の方向から観察すると「幅広」に見える。



特徴的な面構えと体色なので、店頭で見た瞬間にハガツオであることを確信したが、念のため「日本産魚類検索 第2版」のサバ科の同定の鍵を辿り、1)体は紡錘型でやや側扁する、2)両顎歯は強い(写真下左右)、3)腹鰭の大きさは普通(写真下段右)、4)第1背鰭と第2背鰭はよく接近する、5)側線は1本(写真中段右の赤矢印)、6)体は全て小鱗に被われる(写真下段左)、7)体側上半部に縞模様がある(写真中段右)、8)鋤骨に歯がないなどの形質を確認してカツオであると判断。

2012年12月に博多を訪問した際に、柳橋連合市場内の竹森鮮魚店で購入(当日はキロ1,800円/1.7kg)。ネット上の情報でも「鮮度が重要」と良く書かれているが、今回の個体は色つやも良く、鰓は粘りも全くない鮮紅色という明らかに新鮮な個体。それでも身は柔らかめで、身割れしやすいので下ろす時には注意が必要。カツオなどとは全く異なるピンク掛かった白っぽい色の身(写真下の断面に注目)で、血合いはあまり大きくない。まずは刺身に。さっぱりした酸味の中に確かな旨味が感じられる。皮目には脂ものっているが、軽い風味なのでいくらでも食べられてしまう。無理矢理に例えるならば、脂の乗りがほどほどのビンナガ、もしくは逆に脂の良く乗った「黄メジ」(小型のキハダ)といった感じか。文句なしの美味。一部は「なまり節」に。身はやはり柔らかめだが、旨味甘みを強く感じる。続いて煮付け。ホワホワした食感になるが、脂の乗りが良いのでパサ付く感じはない。旨味も多い。最後にしばらく冷凍にしておいた「サク」をブツ切りにして唐揚げに。冷凍にしたせいなのか繊維質が強くなっているような印象。ただし旨味の多さは変わらない。結論としては、どの料理にしても非常に美味い魚。