新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

1: マダイ

スズキ目スズキ亜目タイ科マダイ亜科マダイ属
学名:Pagrus major (Temminck and Schlegel)
英名:Red sea bream snapper [原]

大分県産の全長約37cmの活け〆雌個体(発達中の卵巣を確認)から摘出した左右の「魚のサカナ」。これが本家本元、正真正銘の「鯛のタイ(鯛中鯛、鯛中ノ鯛)」。写真右は、写真左の左側の標本と同一のものだが、射出骨を除去する前の様子を反対側から撮影したもの。ネット上には大量の「真鯛のマダイ」の写真が存在するが、外れやすい射出骨(なかなか長い)付きの写真は見かけなかったので当方でご紹介。

さて「真鯛のマダイ」であるが、この形が「魚のサカナ」の標準/基準になるだけあって、流石に均整が取れた非常に美しいもの。この標本では、烏口骨の『嘴』部分が非常に緩やかにカーブしている。また肩甲骨孔は比較的小さめ。



一見してマダイである事はほぼ間違いない個体ではあったが、一応「検索」の『鍵』を辿り、1)両顎の側部には2〜3列の臼歯がある、2)両眼域の隆起は大きくない(写真中段左)、3)体色は赤色、4)頭の鱗域は両眼間隔域に達する(写真中段左赤矢印)、5)両顎の側部には2列の臼歯がある、6)臀鰭軟条数は8(写真下段左)、7)背鰭棘は全て硬く、伸長しない(写真中段右)、8)体高は低く、体長は体高の2倍以上、9)体側に青色斑点がある(写真下左)、10)尾鰭後縁は黒く(写真下段右青矢印)、下縁は白いなどの形質からマダイに辿り着く事を確認した。体色や体型が良く似たチダイとは、形質6/7/10および鰓蓋後縁にある鮮紅色部の幅が広くないことで区別できる(チダイは、臀鰭軟条数が9で、背鰭第3および第4棘がやや糸状にのび、尾鰭後縁は黒くならず、鰓蓋後縁の鮮紅色部の幅が広い)。

今回の天然個体では鼻孔が2つ確認できる(写真上)が、養殖のマダイでは2つの鼻孔の間隙部(同上緑矢印)が欠損し鼻孔1つになってしまっているものが高頻度で見られるとのこと。

2011年2月に角上魚類日野店で購入した、大分県漁協佐賀関支店のブランド『関の一本釣り 関たい』(当日は 1,200円/匹、出荷No. 110491)。この個体は刺身に。キメの細かい身質に、程よい噛み応えと立ち上る風味、脂ののり、そして素晴らしい旨味。まさに絶品である。また粗は潮汁に。当然非常に美味い。

ちなみに、このマダイは「鯛の九つ道具」の中の『レアもの』の1つである「鳴門骨」を持っていたが、瘤自体はあまり大きくなかった。「鯛の九つ道具」に関しては、別枠の「【番外編】鯛の九つ道具(その1)」で紹介する。

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三重県度会郡南伊勢町の相賀浦産の全長約45cmの個体から摘出した「真鯛のマダイ」(2011年3月初旬に筆者の父親が釣獲)。このマダイも「鳴門骨」を持っており、別枠の「【番外編】鯛の九つ道具(その1)」で紹介する「鯛の8つ道具」はこの個体から摘出したもの。この「真鯛のマダイ」の烏口骨の『嘴』部分は直線的。

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茨城県産の「鯛煮干し」(長さ約8cmの個体)から摘出した「真鯛のマダイ」。小型ながら既に立派な形である。烏口骨の『嘴』部分は直線的。ちなみにこの「鯛煮干し」からは非常に良い出汁が出るので、すまし汁などを作る時に愛用している。愛知県名古屋市の(株)愛知水産製造。

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本項の初稿時から掲載していた「真鯛のマダイ」。釣獲した体長約35cmの天然物から摘出したもの。烏口骨の『嘴』部分が非常に緩やかながら曲線的。