新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

67: イボダイ

スズキ目イボダイ亜目イボダイイボダイ
学名:Psenopsis anomala (Temminck and Schlegel)
英名:Japanese butterfish [原/メダイと同じ], Melon seed, Pacific Rudderfish, Wart Butterfish

別名エボダイ、ボウゼ。体長約15cmの個体から摘出した左右の「魚のサカナ」。肩甲骨先端が尖り気味で、肩甲骨全体としてはほぼ三角形。烏口骨の嘴部分が非常に長く伸び、『背鰭』部分の流れるような形が中々美しい。その身と同様に「疣鯛のイボダイ」の表面/内部もかなり脂質が多いようで、いい加減な処理だけで放っておくと直ぐに黄色に変色してしまう。

射出骨および胸鰭軟条付きで調製した別個体の標本。アルコール処理後に数日間風乾してから撮影。


「日本産魚類検索 全種の同定 第2版」によると、日本近海に生息するイボダイ科の魚は4種類しかいない。クロメダイおよびメダイを判別することは容易なのだが、さてイボダイ/ニセイボダイを判別する段になるとこれがかなり大変で、「日本産魚類検索」では「側線鱗数(イボダイでは55〜63/ニセイボダイでは62〜70)」が『同定の鍵』として挙げられているのみである。写真下段左に示したように、今回手に入れたイボダイは、体高が低く鰓蓋後方にある黒斑(ちなみにこれが「疣」の由来)がはっきりしているもの(左の3個体)と、体高が高めで黒斑が薄めのもの(右3個体)があり、もしかしたらイボダイ/ニセイボダイの2種なのか?と思ったのだが、残念ながらこの種の鱗は非常に剥がれやすく、この状態で「側線鱗数」を数えるのは筆者には不可能であった(専門家の方ならば何とかなるのだろうか?)。他に両種を区別できる形質はないか?と「日本産魚類検索」に当たると、第一鰓弓の鰓耙数(gill rakers; GR)がイボダイでは18〜21/ニセイボダイでは20〜22との記述あり。そこで上記6個体の第一鰓弓鰓耙数を数えたところ、全て「18」(写真下段右)。つまり体型に多少の違いはあるものの、この形質からは上記6個体は全て「イボダイ」であることになる。

ちなみに「日本産魚類検索」の付記にも、イボダイ/ニセイボダイの関係は「要再検討」で、同種の可能性もあると書かれているので、今後の研究如何では分類上「ニセイボダイ」が消える可能性も?

八王子総合卸売センター内、高野水産で購入(当日はキロ600円)。今回は新鮮だったので刺身と酢締め、更に塩焼きで。生食は軽いコリっとした歯ごたえ。捌いている時に包丁が切れにくくなるほど、非常に脂がのっており甘みを感じさせる。もちろん旨味も多く美味。脂が余り得意でない向きには酢締めの方が向いているかも。塩焼きは美味。ただし身が多少水っぽく感じるので、やはり定番の干物の方が向いていると思われる。

(11/24/10 改稿)