新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

105: アカシタビラメ(「魚のサカナ」なし)

カレイ目カレイ亜目ウシノシタ上科ウシノシタ科イヌノシタ亜科イヌノシタ属注1
学名:Cynoglossus joyneri Günther
英名:Red tongue sole [原]

アカシタビラメは、進化の過程で胸鰭を完全に失ってしまっている。

1991年に刊行された『鯛のタイ』(著・大西彬/草思社刊)という本には、「アカシタビラメの鯛のタイ」とされる骨の写真が掲載されているが、自分自身が実体顕微鏡の下でどれだけ慎重に筋肉組織を剥がしてみても(筋繊維を少しずつ除去してみても)、アカシタビラメの胸部付近に写真のような骨を発見することができず、この魚には本当に「魚のサカナ」があるのか?と常々疑問を抱いていた。

ところが先日見つけた1981年に出版された学術論文注2を見てその疑問は氷塊。この論文は、アカシタビラメC. joyneriそのものではないが、同じイヌノシタ属のC. cynoglossus(Bengal tonguesole)とC. bilineata (bilineatus?)(Fourlined tonguesole)を含めたカレイ目5科10種の胸部を骨学的に調べたというもの。その中に「イヌノシタ属では胸鰭が失われており、肩甲骨と烏口骨はもはや存在していない」という明確な記述と図表があり、やはり「魚のサカナ」はなかったのか、、、と納得した次第。

ということで、上の写真はアカシタビラメの胸部から摘出できた、擬鎖骨、尾舌骨、上擬鎖骨と後側頭骨が一体になったもの、腹鰭が結合する基鰭骨(無眼側のみに存在)の5つ。折角なので上記論文の中の図表と同じ様に並べてみた。

この写真では見難いが、アカシタビラメの有眼側の側線は3本。

料理に関しては、お馴染みの「舌平目のムニエル」はやはり最高に旨い。また新鮮なものなら刺身やカルパッチョも試す価値あり。一切れ口に入れてコリコリっとした食感を楽しんでいると、中から上品な旨味が溢れてきて口の中一杯に広がる。八王子総合卸売センター内、高野水産で購入。

注1:2000年発行の「日本産魚類検索」(中坊編)では、亜目名がない。

注2:S. Makhdoom Hussain, Osteological study of girdles in selected representatives of five families of flat-fishes (Pleuronectiformes), Hydrobiologia 85: 85-91 (1981).