新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

113: キュウセン

スズキ目ベラ亜目ベラ科カンムリベラ亜科キュウセン属
学名:Halichoeres poecilepterus (Temminck et Schlegel)
英名:Multicolorfin rainbowfish [原], diandric wrasse, Kyusen wrasse

別名ぎざみ、キュウセンベラ、アオベラ(雄)/アカベラ(雌)。別名からも分かる通り、雄と雌の体色は全く異なる。「雌性先熟性雌雄同体魚」ということで、小さい頃は雌で、成長すると雄(二次雄)に性転換するのが基本パターンだが、雌と同じ体色で小さい頃から精巣を発達させる雄(一次雄)も存在している。つまり緑色の個体であれば、全て性転換した「二次雄」ということになる。

ということで、上は二次雄個体の体の右側の「魚のサカナ」。擬鎖骨付きの標本を体の内側方向から観察するとこんな感じ。烏口骨上部の張り出したところの肩甲骨側のカーブ部分に突起があることと、烏口骨の「嘴」部末端ががっしりと太くなっているのが特徴。全体的な形のバランスはなかなか良い。

同一個体の左側の「魚のサカナ」を体の外側方向から。写真では見難いかも知れないが、実は肩甲骨/烏口骨の一部が擬鎖骨と融合している。結合もかなり強固。同じような『融合』は、6/15/10現在でキハダ、ビンナガ、カツオ、オアカムロで確認済みだが、当然ながらキハダ/ビンナガ/カツオのグループとその他の魚に直接的な系統関係はない。

関西では一般的だが、関東ではその派手な色合い(何しろ英名が「多色の鰭の虹魚」)からかほとんど見向きもされないという地域格差のある魚。故に関東では非常に安価。ただ実際に食べてみれば美味。少し柔らかいが旨味の多い身は、新鮮ならば刺身でも十二分に楽しめる。他に煮付け、塩焼きなど。八王子総合卸売センター内、高野水産で購入。

注:このように最初から雄(一次雄)と雌が存在しているが、成長に伴い雌が追加的に性転換して雄(二次雄)になるような場合に、その生物を”diandricである”という。ちなみに”wrasse”はベラ科の魚の総称。