新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

137: マエソ

ヒメ目ヒメ亜目エソ科マエソ属注1
学名:Saurida macrolepis Tanaka注2
英名:Spotted tail grinner [原], Lizardfish(マエソ属の魚の一般名)

体長20cmほどの個体から摘出した左右の射出骨付き標本。三角形に広がった射出骨が「王冠」の様にも「鶏冠」の様にも見える。烏口骨は非常に大きく広がり、名前の通りハシブトガラスの『嘴』に非常に似た形。また「魚のサカナ」の『背鰭』に相当する部分に楕円形の孔が開いている。肩甲骨孔は大きいが、烏口骨があまりに大きいため、肩甲骨そのものは比較的小さく感じる。右は別の個体からの標本。射出骨を外したものだが、こうするとキリッと精悍な印象に変わるのが不思議。


以前大きな混乱があったこともあり、マエソ属の魚の同定は一般には難しいとされている模様。今回の個体は「日本産魚類検索 全種の同定 第2版」に則り、1)胸鰭の先端が腹鰭の根元を越える(写真左の赤線参照)、2)尾鰭上縁に顕著な黒色点列がない、3)腹面が白い、4)尾鰭下縁が白い注3(写真右の赤矢印)ことから「マエソ」と判断した。

本来はすり身にして「かまぼこ」の原料に使われることが多い魚。今回は3枚に下ろして他の魚と一緒に天ぷらにしたが、旨味も多く中々の美味。ネット検索をしていると「マエソ=小骨多し」のような記述が多いが、今回ほとんど気にならなかったのは何故だろう?愛知県一色漁港の「三河一色さかな村」で購入。

見るからに凶暴そうな顔つきです、、、


注1:「日本産魚類検索 全種の同定 第2版」ではヒメ目エソ亜目エソ科マエソ属になっている。

注2:「日本産魚類検索 全種の同定 第2版」や「新訂原色魚類大圖鑑」の出版時点では、まだマエソの学名は確定しておらず、 Saurida sp.(もしくは Saurida sp.2) となっていたが、以下の論文の出版をもってようやく確定。
Takehiko Inoue and Tetsuji Nakabo, The Saurida undosquamis group (Aulopiformes: Synodontidae), with description of a new species from southern Japan. Ichthyol Res 53: 379-397 (2006)

注3:ただし注2に挙げた論文内の「種分類のカギ」の項には「尾鰭下縁が白くなっていること」は挙げられていない。