新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

138: ギマ

フグ目ギマ亜目ギマ科ギマ属
学名:Triacanthus biaculeatus (Bloch)
英名:Blackfin triplespine [原], Short-nosed tripod-fish

別名ツノギマ(愛知県三河地方)。体長20cmほどの個体2匹から摘出した標本。日本に生息するギマの仲間は一科一属一種のみなので同定は容易だが、外形の前半分から想像できるように系統的にはカワハギにより近いようで、「魚のサカナ」もフグ系ではなくカワハギ系の形。ただしカワハギウマヅラハギのものよりも曲線的かつ太くがっしりした印象で、肩甲骨孔もかなり大きい。写真の上下を逆さまにして見ると、カワハギ/ウマヅラハギのものと同様に烏口骨上部の突起が「アシカの手」のように見える。右の拡大写真は写真左の左上の標本を反対側から撮影したもの。骨の石灰化の程度が高いため全体的に白色に見える(アルコール処理後に撮影)。

上記した様に体の前半部はカワハギ類に良く似るが、後半部は細長く伸び、異なった2種の魚が「キメラ」になったかのような外形。英名の「三本角」や「三脚魚」が、背鰭第1棘と左右の腹鰭第1棘が太く長い『刺』の様になっていることに由来していることは明白だが、対になったこの腹鰭の『刺』で魚体を立たせることが出来るのが面白い(写真右)。

外皮が非常に固くザラザラしており、また体表から大量の粘液を分泌する(写真左)ので、ギマを下ろすのは中々大変。皮を剥いだ魚体表面が銀色に輝いている(写真右)のも、特にカワハギ的なものを期待していると少々奇妙な感じを受ける。今回は3枚に下ろして昆布締めにしたが、かなりの美味。本来の身質はかなり柔らかいのだが、昆布で程よく締めてやると、カワハギに似た感じの繊細でしっとりした口当たりになる。上の魚は三河一色さかな村、高橋水産で購入したものだが、愛知県の三河地方では、スーパーなどでも案外普通に売られている(少なくとも夏場は)。

注:実は筆者の出身地。何しろカワハギを「本ギマ」と呼ぶ土地である。