新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

212: コモンフグ

フグ目フグ亜目フグ科トラフグ属
学名:Takifugu poecilonotus (Temminck and Schlegel)
英名:Finepatterned puffer [原]

富山湾産の体長約13cmの個体(釣りの獲物で堤防に捨てられていたものを息子がもらってきた)から摘出した左右の「魚のサカナ」。射出骨付き。基本形はフグ科の「魚のサカナ」の典型的なものだが、「小紋河豚のコモンフグ」は、射出骨の間にある膜が非常に厚く、ほぼ完全に間隙を埋めている。右側の標本はその膜を除去して射出骨が作る孔を見やすくしたもの。肩甲骨孔(下方が完全には閉じていない一番下の孔)の大きさとほぼ同じである。

【写真左】写真上の左側の標本を反対側から撮影したもの。射出骨の作る間隙がほぼ完全に埋められている。
【写真右】写真上の右側の標本の拡大図。ヒガンフグヨリトフグのものでも見られた、第4射出骨の後部(あるいはそれに結合した別の骨?)の『せり出し』が観察できる。ちなみにコモンフグのものの『せり出し』は、ヒガンフグのものよりは大きいが、ヨリトフグのものほど大きくはない。また烏口骨が湾曲していること、その上部突起(『背鰭』部)が角の様に鋭く突き出していることも見て取れる。



1)体に側線があり(写真中段左の赤矢印)、断面が丸い、2)体表の背面と腹面に小棘が分布し、それらは胸鰭の前後両方で連続する(分かりにくいが、写真中段左の緑四角に注目)、3)尾鰭後端は裁形(写真上)、4)鼻孔は2個(外から判別するのは難しい)、5)背鰭(写真下段左)と臀鰭(写真下段右)の軟条数がそれぞれ「12」と「11」、6)背側に白色斑が散在し、背鰭後方のものは円形に近い(写真上段右)、7)体背面小棘の基部は顕著な微小白点にならないなどの形質からコモンフグであると判断。体色の雰囲気が似たショウサイフグとは、体表の小棘の存在と、臀鰭が淡黄色(ショウサイフグは白色)であることで区別可能とされているが、個体差により特に臀鰭の形質では区別が難しいものもある模様。要注意。

有毒フグということで、標本調製用に胸鰭近傍部分だけを切り出し、残りは厳重に包んで廃棄した。当然食していないので味は分からない。

【参考】厚生労働省のサイト「自然毒のリスクプロファイル:魚類:フグ毒」によると、コモンフグは卵巣と肝臓は猛毒、精巣/皮膚/腸は強毒(つまり「白子」も食べられない)、筋肉は弱毒。ただし岩手県越喜来湾および釜石湾ならびに宮城県雄勝湾で漁獲されるコモンフグについては筋肉も毒性が高いため食用不可とのこと。また外見が非常に良く似たコモンダマシとは、上記7)の形質(コモンダマシの体背面小棘の基部は顕著な微小白点になる)で見分けられるとされているが、コモンダマシの方は筋肉の毒性も高いので食用不可。以上述べてきたように、フグ毒に関しては個体差、地域差、更には毒量に季節差さえあるため、素人判断は非常に危険である。フグ調理の専門家以外が処理したものを食べることは絶対に止めるべき。ここまで警告されて、それでもまだ食べたいという場合は自己責任で(万が一の場合も当方は一切責任を持ちません)。