新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

332: アラスカメヌケ

スズキ目カサゴ亜目メバルメバル
学名:Sebastes alutus (Gilbert)
英名:Pacific ocean perch, Longjaw rockfish, Menuke rockfish, (『新訂原色魚類大圖鑑』に英名表記なし)

通名アカウオ(赤魚)青森県産の全長約41cmの雌個体から射出骨付きで摘出した左右の「魚のサカナ」。「阿拉斯加目抜/阿羅斯加目抜のアラスカメヌケ」は、最長部で約4.8cmとなかなか大きなもので、その形状は典型的なフサカサゴ科の「魚のサカナ」そのもの。中でもメバル属のものにほぼ共通した「烏口骨の『背鰭』の部分が比較的高い」という特徴が観察されるが、肩甲骨および烏口骨の『背鰭』部分の先端部はあまり尖らず、丸みを帯びる。



「日本産魚類検索 第2版」の同定の『鍵』を辿り、1)側線は側線有孔鱗で開口する、2)胸鰭に遊離軟条がない、3)胸鰭も背鰭も普通の大きさ、4)胸鰭に欠刻がない、5)背鰭は13棘15軟条(写真下段左)、6)頬(眼下骨系)に棘がない、7)胸鰭上半部の後縁は丸い、8)眼窩下縁に棘がない、9)頭頂棘があるが弱い(写真中段右の黄四角)、10)下顎は著しく前に突出し、その先端は尖る(写真中段左の緑丸)、12)涙骨に鋭い棘がない(写真中段左の青四角)、13)吻は短くない、14)臀鰭軟条数は3棘8軟条(写真下段右)などの形質からアラスカメヌケであると判断した。更に「新訂原色魚類大圖鑑」に記された 15)眼隔域はわずかに凹む(写真中段左の紫矢印)、16)上顎後縁は眼の中央下に達する(写真中段左)、17)下顎歯は口を閉じると上顎の前方に露出する、18)尾鰭後縁は浅く湾入、19)涙骨、主上顎骨、下顎などに小さな鱗を被る、20)体色は暗赤色などの形質も確認。また、21)臀鰭第2棘(写真下段右の紫線)は第3棘(緑線)よりわずかに短い。

ちなみに他の『メヌケ』『アコウ』類とは、形質8でホウズキ(ホウズキ属)/ベニメヌケ(ホウズキ属)/アラメヌケ/アコウダイ(これらの眼窩下縁には種によって2〜7本の棘がある。ちなみに眼の下にある骨の縁を前後になぞってやると棘の有無はすぐに分かる)と、形質10でヒレグロメヌケ/バラメヌケ/オオサガ/サンコウメヌケ(これらの種の下顎は著しく前に突出せず、その先端は尖らない。ちなみに2004年にサンコウメヌケはオオサガと同一種とされて消えたとのこと)と、形質5/9/12/13/14/21でウケグチメバル(ウケグチメバルは涙骨に鋭い棘が2棘あり、吻は短く、頭頂棘は強く、背鰭は12軟条で臀鰭は6軟条、臀鰭第2棘は第3棘より長い。またウケグチメバルはあまり大きくならない)と、形質9と体色でクロメヌケ(クロメヌケには頭頂棘がなく、体色は黒/黄色っぽい。また背鰭棘が14棘である)と、それぞれ見分けることができる。

岩手県水産技術センターのサイトにある「いわての魚類図鑑」の『ソイ・メヌケ類/アラスカメヌケ』の項にもあるように、この魚の腹膜は灰褐色(写真左/ちなみにウケグチメバルの腹膜は黒色)。またアラスカメヌケは卵胎生で、産卵期は4〜5月頃。今回の雌個体の腹の中にも既に両眼が出来上がっている胎魚が大量に入っていた(写真右)。

2012年5月初めに八王子綜合卸売協同組合のマル幸水産で購入(当日はキロ1,200円/0.98kg)。冒頭にも記したように、アラスカメヌケは「赤魚」の名で広く流通(ただしタイセイヨウアカウオ、オキアカウオなども「赤魚」として流通しているそうなので注意)しており、その冷凍フィレ/切身、粕漬け、西京味噌漬けなどはスーパーなどでも普通に見かけるもの。ただ本稿の魚のように丸のままの鮮魚は市場以外で見たことはない。今回の魚は鮮度的に生食ギリギリ可能か?というものであったので、まずは一部だけを生で試食。身は柔らかめで、脂からくる甘みは感じるが旨味はもう1つと言ったところ。続いて半身を塩焼きに。皮目の香ばしさが食欲をそそる。また焼いた方が生よりも旨味が立つが、溢れ出る程ではない。身離れは良く、骨からポロポロ取れる感じで食べやすい。なかなかの美味。残りは自家製の塩麹を塗り付けて一晩置いてから焼き物に。当然のことながら単なる塩焼きよりも旨味が増し、4月から中1になった長男曰く「味が深い」(これを聞いて思わず笑ってしまった)。筆者も単なる塩焼きより塩麹漬け焼きの方が好みである。


【注】元々「赤魚」はアコウダイの流通名であったが、アコウダイの水揚量減少により『代用』されるようになったアラスカメヌケにも使われるようになったという歴史的経緯があるとのこと。