新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

270: イズカサゴ

スズキ目カサゴ亜目フサカサゴ科フサカサゴ亜科(フサカサゴ族)フサカサゴ
学名:Scorpaena neglecta Temminck and Schlegel
英名:Izu scorpionfish [原]

地方名おにかさご/鬼笠子(関東地方/ただし標準和名「オニカサゴ」は本稿のイズカサゴよりも浅い場所に生息する別の魚である。混同なきよう)、おきおこぜ/沖おこぜ(関西地方)など。ちなみに釣り人が一般に「オニカサゴ」と総称するのは、本稿のイズカサゴ、フサカサゴ、コクチフサカサゴの3種である。長崎産の、全長約28cmの個体から摘出した射出骨付きの「魚のサカナ」。写真右は、写真左の右側の標本を反対側から撮影したもの。「伊豆笠子のイズカサゴ」の形は、やはりフサカサゴ科の「魚のサカナ」の基本パターンと言えるものだが、その中ではそれなりに個性的。特に左右方向に長く、上下方向には短い(=「体高」が低い)のは独特。また烏口骨上方の『背鰭』部分があまり高くならないことはカサゴウッカリカサゴユメカサゴの「魚のサカナ」で観察されているが、メバル属の「魚のサカナ」では見られないもの。

また片方の標本では、第4射出骨の外側にも棘のような突出が存在(写真左の赤丸)。また第1/第2射出骨の間隙にある孔の半分以上は、下方から伸びてきた薄板状の骨で覆われる(孔の片側のみ/写真右の緑矢印)。



何時も通り「日本産魚類検索 第2版」の同定の鍵を辿り、1)側線は溝状でない、2)胸鰭に遊離軟条がない、3)胸鰭も背鰭も普通の大きさ、4)胸鰭に欠刻がない、5)背鰭は12棘9軟条、6)頬に強い棘と隆起線がある(写真中段左)、7)両眼間隔に鱗がない、8)口蓋骨に歯がある(写真下左の緑矢印)、9)胸鰭上半部の軟条だけが分枝する(写真中段右)、10)吻は特に長くない、11)涙骨下縁に3棘ある(写真下右:ただし今回の魚のものは、赤丸で示した1棘が痕跡的。また反対側の涙骨には2棘しか観察されなかった)、12)額棘(頭頂部のキールの真後ろの棘)がない、13)胸鰭基底付近は皮膚にも鱗にも被われない(写真中段右)、14)胸鰭腋部に1皮弁あり(写真下段左の赤丸)、15)腹鰭前方域は全く無鱗(写真下段右)、16)胸鰭は19軟条(見にくいが写真中段右)などの形質からイズカサゴであると判断。また「新訂原色魚類大圖鑑」にイズカサゴの形質として記載されている、17)頭と体に総(ふさ)状皮弁があること(実際体中が皮弁だらけである)、18)下顎先端にこぶ状突起があること、19)両顎/口蓋骨/前鋤骨の歯は絨毛状(写真下左)、20)体側に暗色横帯あり、各鰭に小黒点黒点の周りは赤い)が散在することなども確認。

八王子総合卸売センター内、高野水産で購入(当日はキロ1300円/0.42kg。腹の中には小さなエソの仲間が半消化状態で1匹入っていたが同定は不可能であった)。鋭い背鰭棘に気をつけながら、その根元をキッチンバサミでカットし、まずは一部を生で試食。身質は非常に良いのだが、あまりにも上品かつ淡白な味で、正直あまり旨味を感じない(長崎から「長旅」をしてきたせいか?)。ということで、残りは煮付けに。キメの細かい身質の良さが際立ち、煮付けにしてもしっとりした食感。上品な旨味も立って美味。

【注】イズカサゴの背鰭棘条は非常に長く鋭いもの(写真下)で、一般に「刺毒」があるものと考えられているのだが、「釣り曜日ー遊魚漫筆」のイズカサゴのエントリーの「その素顔」を見る限り、本当に「毒」があるかはまだ確定していない模様。どちらにしても、自分自身でわざわざ刺されてそれを確かめるつもりはないし、また毒があろうがなかろうが、この鋭い棘が深く刺さればジクジク痛むのは容易に想像がつくので、気をつけるに越したことはないだろう、、、というのが筆者の結論。