新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

333: アカハタモドキ

スズキ目スズキ亜目ハタ科ハタ亜科ハタ族マハタ
学名:Epinephelus retouti Bleeker
英名:Darkred grouper [原], Red-tipped grouper, Red-tipped rockcod, Brownback grouper, Redtip grouper

地方名オキアカバ/沖赤羽(小笠原)、ハンゴミーバイ(沖縄/ただしアカハタと混称)など。東京都小笠原産の全長28cmの雌個体(発達途中の卵巣を確認)から摘出した左右の「魚のサカナ」。写真右は、写真左の左側の標本を反対側から観察。「赤羽太擬のアカハタモドキ」の形状は、典型的なハタ科マハタ属の「魚のサカナ」のもので、その中でも特にアカハタのものと酷似している。実際2種の「魚のサカナ」間には相違点を見つけることすら困難なほどで、両者の写真を並べても判別不可能であろう。

「赤羽太擬のアカハタモドキ」の『背鰭』部は比較的大きめに湾曲しながら立ち上がる。


アカハタモドキ(小笠原産)
アカハタ(沖縄県産)
全体像
体側部
体側部(拡大)
背鰭
尾部
上の表は左側に本稿のアカハタモドキ(東京都小笠原産)、右側にアカハタモドキに非常に良く似たアカハタ(2010年10月に手に入れた沖縄県産)の各パーツの写真を並べ、両者の判別に必要な形質を対比したもの(要するに「見分け方」)。「日本産魚類検索 第2版」のハタ科の同定の『鍵』を辿り、1)背鰭棘数は11(写真4段目)、2)臀鰭軟条数は8、3)背鰭棘条部は前方で少し高くなる(写真4段目)、4)側線鱗管に放射状小管がない、5)尾鰭後縁は截型(=丸くない/写真5段目)、6)背鰭第2棘は伸びない(写真4段目)、7)体に暗色斑がない(写真2&3段目)、8)背鰭棘条部の外縁は赤い(写真4段目左/アカハタではこの部分が黒い)、9)背鰭軟条部後縁と尾鰭背縁は黒い(写真5段目左/アカハタではこの部分が黒くならない)などの形質からアカハタモドキであると判断。また『新訂原色魚類大圖鑑』に記された、10)眼隔域は平坦、11)吻はやや尖る、12)口は大きい、13)下顎側方の歯は3〜4列に並ぶ、14)前鰓蓋骨縁辺は丸く、後下縁の鋸歯はやや肥大する、15)腹鰭は胸鰭基底の下方よりやや後方に位置する、16)体色は暗赤色で各鱗に緑褐色斑点がある(写真2&3段目左/アカハタの鱗には緑褐色斑点がない)などの形質も確認した。 八王子綜合卸売協同組合・やまぎし水産で購入(当日はキロ2,000円/0.28kg)。アカハタが6〜7匹入れられたトロ箱(表示は「赤ハタ」)の中に1匹だけ混じっていたものをピックアップ。眼や鰓の様子から判断するとまずまずの鮮度の個体であったので、取り敢えず一部をそのまま生(皮なし/皮付き)で試食。ハタ科マハタ属の魚だけあってさすがに身質は良いが、残念なことに旨味があまり感じられない。そこで昆布締めに。物足りなかった旨味が加えられるために非常に上品な一品となる。またこの昆布締めした身を焼いたものもなかなか美味い。ただし生にせよ焼いたものにせよ、その美味さは昆布の旨味と本来の身質の良さに依存したもの。小笠原からはるばる旅をしてきたために味が落ちてしまったという可能性も考えられるが、アカハタモドキ自体に個性はあまりないのかな、というのが個人的な印象。