新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

224: アオハタ

スズキ目スズキ亜目ハタ科ハタ亜科ハタ族マハタ
学名:Epinephelus awoara (Temminck and Schlegel)
英名:Banded grouper [原], Yellow grouper

地方名きはた/黄羽太、あおな(長崎)、あおあら(福岡:種小名の元)、あおなしもうお、たかば等。全長32cmほどの抱卵した雌個体(長崎産)から摘出した左右の射出骨付き標本。写真右は、右側の標本の射出骨を外したところ。「青羽太のアオハタ」の全体的な形は、同じマハタ属のキジハタアカハタのものに良く似ている。

その中でもキジハタの「魚のサカナ」の形とは酷似しているが、1)肩甲骨の先端部下方がキジハタのものと比べて丸みを帯びていること、2)烏口骨上方の、射出骨との結合部が作るラインがゆるやかに下がり(写真左の赤線)、それから『背鰭』部分が立ち上がること(写真右のキジハタのものではこのラインが一度急激に下方に落ち込んでから『背鰭』が立ち上がる形になる/赤線の角度に注目)、3)肩甲骨/烏口骨下部が作るラインがあまり直線的でないことなどが相違点として挙げられる。

「青羽太のアオハタ」の烏口骨の『背鰭』部分も湾曲しながら立ち上がるが、その湾曲は緩やか。



店頭で見た時から明らかにアオハタであると思われたが、実はこの個体は何故か背鰭棘条数が「10」(写真中段左/ちなみにマハタ属は普通これが「11」)。一応この「背鰭棘条数10」からスタートして「魚類検索」の『鍵』を辿ってみると、尾鰭の形や体色も全く異なるアマミハナダイやイズハナダイなどの枝に辿り着いてしまうことが判明。そこで、背鰭棘数の相違はアオハタ種内の「個体差」であると仮定し、「背鰭棘条数11」以降の『鍵』を辿ると、1)臀鰭軟条数が「8」、2)背鰭棘上部が前方で少し高くなる、3)尾鰭後縁は丸い、4)体側鱗の中央に暗色域がない、5)体に顕著な5本の暗色横帯がある、6)体側に黄色い斑点が散在する、7)体側上半部の暗色横帯縁に黒点がないなどの形質が確認でき、「検索」的にはアオハタに到達した。また背鰭、臀鰭の軟条部と尾鰭後縁は黄色を帯びること(写真中段右)、眼隔域が隆起すること(写真下段左)、前鰓蓋骨後下縁がやや突出し、大きめの鋸歯があること(写真下段右の赤丸)など、「背鰭棘条数」以外の全ての形質も『新訂原色魚類大圖鑑』の「アオハタ」の記述と矛盾しない。以上のことから、今回はこの魚はやはりアオハタであると判断した(もし間違っていたらご指摘下さい)。

八王子総合卸売センター内、高野水産で購入(当日はキロ2,000円/650g)。体表は大量の粘液でベトベトしている。今回は刺身、昆布締め、そしてアラの潮汁に。下ろした身は透き通るような美しい身で、長崎から旅をしてきたせいか、身質もコリコリというよりはしっとり系。キメは細かい。刺身で食べても上品な旨味(逆に言えば「溢れるほどの旨味」ではない)と甘みを感じて美味。これを昆布締めにすると、昆布からの旨味が加わり、多少水分が抜けることもあって食感も良くなる。非常に美味い(連れ合いに言わせると「最初から昆布締めにしておけば良かったのに」だそうで)。昆布出汁の潮汁も同様の理由で美味。


注:WEB魚図鑑では学名をそのまま読んだ「エピネフェルス属」となっているが、どうやらマハタマハタモドキを「ヒポルソドゥス属」という別の属に分離したために(FishBaseでもマハタの学名は Hyporthodus septemfasciatus (Thunberg)になっており、Epinephelus septemfasciatus はシノニム扱い)、「マハタ属」ではおかしくなってしまったということらしい。

(6/14/11 一部改稿)