新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

233: ヒトミハタ

スズキ目スズキ亜目ハタ科ハタ亜科ハタ族マハタ
学名:Epinephelus tauvina (Forsskål)
英名:Greasy reefcod [原], Estuary rock cod, Giant grouper, Greasy cod, Greasy grouper, Orange-spotted grouper

沖縄名テンテンミーバイ、アヤーミーバイ、ゲラデーミーバイ、(カンモンハタなどと区別されずに)イシミーバイなど。沖縄産の全長約35cmの個体から摘出した「魚のサカナ」の標本。写真左は射出骨付きで、また写真右は写真左の右側の標本の射出骨を外して撮影したものだが、射出骨のあるなしで随分印象が変わるのをお分かり頂けるはず。「瞳羽太のヒトミハタ」は、他のマハタ属の「魚のサカナ」と形の基本的な特徴(例えば、烏口骨上方と射出骨の結合部が作るラインが一度下方に落ち込んでから『背鰭』が立ち上がること)を共有しているが、1)肩甲骨の前縁は直線的で、前方下方部がより鋭角的に尖るため全体的に横長の印象を与えること、2)肩甲骨と烏口骨の作る下方のラインが直線的であること、3)肩甲骨孔の形がきれいな卵型であること、4)烏口骨上方の『背鰭』部分の前縁が細かく波を打った様になっていること、5)烏口骨が太めで、がっちりした印象を与えるが、『背鰭』から『嘴』先端へ向かうラインは直線でなく少々波打つことなど、多くの点で独特であると言える。

烏口骨の『嘴』部先端方向から撮影。『背鰭』部分が大きく湾曲しながら立ち上がるのもマハタ属の「魚のサカナ」の特徴の一つだが、ヒトミハタのものはその湾曲の度合いが大きい方。



ハタ科の中でもマハタ属の魚は種類が多く(ちなみに「新訂原色魚類大圖鑑」には52種類ものマハタ属の魚のイラストが掲載されている)、成長の度合いや生息場所の違いなどで体色や模様が異なることも多々あるため、例えば鮮魚店の店先でそれらを確実に見分けることはなかなか難しい。よって今回の魚もその形質を「日本産魚類 全種の同定」を元に入念にチェックし、1)背鰭棘条数「11」、2)臀鰭軟条数が「8」、3)背鰭棘上部が前方で少し高くなる、4)尾鰭後縁は丸い(写真下段右)、5)体側鱗の中央に暗色域がない、6)体の暗色横帯は不明瞭、7)体側の斑点は眼径よりも大きくならず、網目模様を形成する、8)胸鰭全体に暗色斑点が存在し網目模様を形成する(写真下段左)、9)各鰭の斑点は体側のものと同色・同大(写真中段右、下段左右)、10)腹部に斑点あり、11)背部に淡色域がない、12)尾柄背部に黒斑がない(写真下段右)、13)体側中央部の斑点は独立しており、瞳孔より大きい、14)背鰭基底中程に大きな黒斑がある(写真中段右/赤丸)、15)吻は眼の直前で隆起する(写真中段左/赤矢印)、16)体側の斑点の輪郭はにじみ、やや不明瞭であることなどの形質からヒトミハタであると判断した。

ぎのわんゆいマルシェ内の浦添・宜野湾漁協直売所で購入(900円/匹)。今回は3枚に下ろして半身ずつ刺身とバター焼きに。刺身にしたものは、ハタ科の魚の特徴とも思えるキメの細かい透明感のある白身が美しい。少し時間が経っていたからかコリコリという食感はあまり感じなかったが、その分熟成が進んでおり旨味は多い。かなりの美味。バター焼きにすると身がプリプリの食感になり、より旨味も立つ。絶品。


注:WEB魚図鑑では学名をそのまま読んだ「エピネフェルス属」となっているが、どうやらマハタマハタモドキを「ヒポルソドゥス属」という別の属に分離したために(FishBaseでもマハタの学名は Hyporthodus septemfasciatus (Thunberg)になっており、Epinephelus septemfasciatus はシノニム扱い)、「マハタ属」ではおかしくなってしまったということらしい。


【おまけ】

ヒトミハタの上下の顎には口の内側方向に伸びた細長い針状の歯が密に並ぶ(写真上は下顎)。一度口の中に入ってしまった「獲物」がここから脱出するのはかなり困難であると推察。