新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

232: イチモンジブダイ

スズキ目ベラ亜目ブダイ科アオブダイ
学名:Scarus forsteni (Bleeker)
英名:Blackstripe parrotfish [原], Forsten's parrotfish, Rainbow parrotfish, Tricolor parrotfish

沖縄名アカイラブチャー、カナピーキャ、オーブチャー(♂)、イラブチャー(ブダイ類の総称)。沖縄産。全長32cmの(派手な体色から判断して)雄個体から摘出した左右の「魚のサカナ」。写真右は写真左の右側の標本を反対側から観察。「一文字舞鯛(武鯛/不鯛/部鯛)のイチモンジブダイ」の形は、1)肩甲骨の前縁が大きく窪む、2)肩甲骨孔が非常に大きい、3)烏口骨上部の『背鰭』の前縁の一部が瘤のように飛び出す(下記参照)、4)大きく弧を描く烏口骨の『嘴』先端部(擬鎖骨との結合点付近)の一部が幅広になっている、などの特徴がある。これまで見たことのない独特な形。他のベラ亜目の「魚のサカナ」ともあまり似ていない。強いて挙げれば肩甲骨の前縁が窪むという点がシロクラベラのものと共通している程度か。

写真上左側の標本の烏口骨の上方突起(『背鰭』)部分のアップ。『背鰭』前縁の瘤のような部分の根元には幾つかの小孔が存在する。



「日本産魚類検索」の同定の『鍵』を辿り、1)頬部鱗列は3列、2)胸鰭軟条数は「14」(写真中段左)、3)両顎歯板は1/2以上が唇で被われ、その外面は比較的滑らか(写真下段右)、4)後鼻孔は前鼻孔より大きくならない(写真下段左の赤矢印)、5)眼の位置は普通、6)尾は湾入し、両葉に青桃(というより青橙)縦帯がある(写真中段右)、7)眼上部に横帯なし(写真下段左)、8)体側腹部に縦帯が1本ある、9)眼下部の青色域はほぼ水平にのびる(写真下段左)などの形質を確認し、イチモンジブダイの雄個体であると判断。

ぎのわんゆいマルシェ内の浦添・宜野湾漁協直売所で購入(690円/匹)。沖縄では、派手な色彩のブダイ類はほとんどが「イラブチャー」とされ、その種類はほとんど区別されていない模様。今回の魚は刺身とマース煮に。刺身を口に入れてすぐはあまり味がないように感じたが、何度も噛んでいると上品な旨味が出てくる。まずまずの味といったところ。マース煮は磯の風味と旨味が立ち、個人的には刺身よりも好みの味。

注:近縁のベラ科の魚達と同じく、ブダイ科の魚達もほとんどのものが性転換(『雌性先熟』)をするとのこと。ちなみにベラ科の魚達は肉食性だが、ブダイ科の魚達は一般に草食性。