新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

257: キツネダイ

スズキ目ベラ亜目ベラ科タキベラ亜科タキベラ属
学名:Bodianus oxycephalus (Bleeker)
英名:Blackspotted hogfish [原]

全長約35cmの個体(産地を確認するのを失念したが「長崎産」の可能性高し?)から摘出した左右の「魚のサカナ」。これまでもベラ科の「魚のサカナ」の形がかなり多様であることを指摘してきたが、今回の「狐鯛のキツネダイ」も、やはり独特な形。とは言え「ベラ科のものの中にあっては」という但し書きが付き、実際にはスズキ亜目の「魚のサカナ」にあってもおかしくないような、何の変哲もない形である。強いて挙げれば、大きめの肩甲骨孔、烏口骨の上方突起や下部の湾入部の前縁(=本体の後縁)が多少直線的であること、烏口骨本体後縁下部が後方に向かって尖ることが特徴か。ちなみにこれまでに紹介してきたベラ科の「魚のサカナ」の中で、烏口骨本体の下部後縁が尖るのはシロクラベラに続いて2例目。



特徴的な外見からキツネダイであることはほぼ明らかであったが、念のため何時もの様に「日本産魚類 全種の同定 第2版」を開き同定を開始。1)側線は体側後部で中断しない、2)背鰭は12棘11条、3)両顎前部に門歯状歯がない(写真中段右)、4)胸鰭下部軟条は伸長しない(写真中段左)、5)体側に顕著な横帯がない、6)上唇は外見から良く見える(写真中段左)、7)前頭部は膨出しない(写真中段左)、8)背鰭基部に2列以上の鱗列がある、9)尾鰭に暗色縦帯がない、10)臀鰭に黒色斑がない、11)胸鰭基部に黒色斑がない(写真中段左)、12)吻は尖る(写真中段左)、13)背鰭の暗色域は棘条部中央にある(写真下段左)などの形質からキツネダイに辿り着くことを確認した。ただしこの魚の尾鰭後端の上縁と下縁は少々突出し(写真下段右)、同書のイラスト(および「鍵」の一つ)にあるように丸くなってはいない。ちなみに標準和名に「○○ダイ」と付くが、いわゆる「あやかり鯛」の一つであり、「タイ科」の魚とは遠縁の「ベラ科」の魚であるので念のため。

京都中央卸売市場内のシーフーズ大谷で購入した「産直天然もの」(当日はキロ1,000円/0.76キロ)。今回は半身を刺身、残りを煮付けに。刺身は、コリコリした食感で、しっとりとキメの細かい身。噛んでいると身の中から旨味が溢れてくる。これまでに筆者が口にしたベラの仲間の刺身の中では明らかに一番の美味。ベラの仲間に限定しなくても非常に美味いもの。煮付けにすると、身は少々軟らかいホロホロとした食感に変わるが、やはり旨味は多い。脂の乗りも良く、皮のトロトロした食感も良い。こちらも美味い、、、が、個人的には「感動」は刺身の方が大きかった。どちらにしても、この味でキロ1,000円ならコストパフォーマンスはかなり高いと思う。