新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

334: ヨロイメバル

スズキ目カサゴ亜目メバルメバル
学名:Sebastes hubbsi (Matsubara)
英名:Armorclad rockfish [原](FishBaseに英名表記なし)

モヨ(関東近辺/『新訂原色魚類大圖鑑』では標準和名の横に括弧書きされており、恐らく「別名」扱い)をはじめとして、フジメバル/ガガネ/スミカサゴ/ホゴ/モアラカブなど数多くの地方名が存在しているが、他のメバル類/カサゴ類/ソイ類などと混称されている模様。

さて上の写真は新潟産の全長約20cmの個体から射出骨付で摘出した左右の「魚のサカナ」。写真右は、写真左の左側の標本を反対側から観察したもの。「鎧目張のヨロイメバル」は、フサカサゴ科の「魚のサカナ」の基本形と言えるものだが、面白いことに烏口骨の上方突起部(『背鰭』)の高さは低めで、どちらかと言えば典型的なメバル属のものよりもカサゴ属のものに近い印象を与えるもの。メバル属の「魚のサカナ」としては全体的に厚みがあるかなり強固な骨で、骨の表面には光沢がある。肩甲骨孔は大きい。

「鎧目張のヨロイメバル」は、肩甲骨上部と烏口骨本体後端下部を結ぶラインで大きく湾曲している(写真上)。



「日本産魚類検索」のフサカサゴ科の『同定の鍵』を辿り、1)側線は側線有孔鱗で開口する、2)胸鰭に遊離軟条がない、3)胸鰭も背鰭も普通の大きさ、4)胸鰭に欠刻がない、5)背鰭軟条数は12、6)頬(眼下骨系)に棘がない(写真中段左)、7)胸鰭上半部の後縁は丸い、8)眼窩下縁に棘がない、9)頭頂棘がある、10)下顎は著しく前に突出せず、またその先端は尖らない(写真中段左)、11)尾鰭後縁は丸い(写真下段右)、12)眼隔域はくぼむ(写真中段左)、13)体は灰黒色ではなく、黄緑色の斑点が密に分布しない(=ゴマソイではない)、14)体の上半分は暗色ではなく、背鰭基底付近と側線上にそれぞれ白色縦帯が走らない(=シマゾイではない)、15)尾鰭に広い白色横帯がない(写真下段右)、16)側線有孔鱗数は29、17)背鰭棘数は14(写真中段右)、18)腹鰭に褐色小斑点が散在する(写真下段左)などの形質からヨロイメバルであると判断。


また「新訂原色魚類大圖鑑」に記載されている、19)頭部に各種のとげが良く発達する、20)両顎/口蓋骨/前鋤骨に絨毛状歯帯を形成(写真上左)、21)鰓耙は短く瘤状(写真下左)、22)胸鰭後縁は肛門近くに達し、下部軟条は肥厚し分枝しない(写真上右)、23)下顎と眼前部に鱗がない(写真下右)などの形質も確認した。

角上魚類日野店で購入(当日は300円/匹)。閉店30分程前の対面販売コーナーに1匹だけ売れ残っていたものだが、店頭表示は何故か「ハタ」(新潟ではこんな名で呼ばれているのだろうか?)。上の写真からも分かる通り、本稿の個体は購入時に既に眼が白くなっており、最上の鮮度とは言えない状態であった(とは言え、鰓をみる限り「そこそこ」の鮮度で、身もしっかり硬かった)ため、生食は初めから諦めて塩焼きに。熱を通すとブリブリの食感になるが、骨からの身離れはさほど悪くない。身には旨味がなかなか多く含まれ、焦げた皮目の香ばしい風味(個人的にはキチジ/キンキのそれに似ているように感じた)も食欲をそそる。かなりの美味。