新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

327: アコウダイ

スズキ目カサゴ亜目メバルメバル
学名:Sebastes matsubarae Hilgendorf
英名:Matsubara's red rockfish [原] (FishBadseに英名表記なし)

千葉産の全長約50cmの個体から摘出した左右の「魚のサカナ」。射出骨付き。「赤魚鯛のアコウダイ」は、魚体のサイズに合わせて非常に大きく(最長部で約6cmある)、第2/第3および第3/第4射出骨の間隙の孔が滑らかな楕円形であること、第4射出骨の後縁と烏口骨上方の『背鰭』部の前縁が比較的離れていることなどの些細な特徴は挙げられるものの、典型的なフサカサゴ科の「魚のサカナ」の形状であると言い切っても差し支えないもの。後述するようにアコウダイホウズキは外形や体色が良く似ているが、両者の「魚のサカナ」を比較すると、烏口骨上方の『背鰭』部分の高さや、射出骨の間隙の孔の形状など、案外異なる点が多いという印象(実際ホウズキはメバル属ではなく、ホウズキ属という別群に分類されている)。ちなみに関西ではハタ科のキジハタのことを「アコウ鯛」と呼ぶことが多いので混同なきよう。

アコウダイの耳石は周縁がギザギザになっており、この個体のもので最長部が約2cm。



「日本産魚類検索」の同定の『鍵』を辿り、1)側線は側線有孔鱗で開口する、2)胸鰭に遊離軟条がない、3)胸鰭も背鰭も普通の大きさ、4)胸鰭に欠刻がない、5)背鰭は13棘13軟条(写真下段左)、6)頬(眼下骨系)に棘がない(写真中段左)、7)胸鰭上半部の後縁は丸い、8)眼窩下縁に棘がある(写真下左右の青丸/右は標本にしたもの)、9)尾鰭後縁は浅く切れ込む(写真下段右)、10)頭部背面に暗色横帯がない(写真中段右)、11)背鰭・腹鰭・臀鰭・尾鰭の縁辺は暗色ではない(写真下段左右)などの形質からアコウダイであると判断。また「新訂原色魚類大圖鑑」に記載されている、12)眼隔域はわずかに窪む(写真中段右)、13)下顎は長く先端下面にこぶ状突起がある(写真中段左)、14)両顎、口蓋骨、前鋤骨に絨毛状歯がある、15)胸鰭は臀鰭に達する、16)涙骨、両顎骨に小さな鱗がある(写真中段左、写真下左)、17)涙骨下縁に鋭い2本の棘がある(写真下左右の緑数字)、18)腹膜は黒色などの形質も確認した。

ちなみに体形・体色が良く似たホウズキ属のホウズキとは、形質5と9(ホウズキは背鰭が12棘で尾鰭後縁は截形)により見分けることが可能。加えてホウズキはアコウダイほど大きくはならないとのこと。また近縁のアラメヌケとは形質10と11(アラメヌケは、頭部背縁に3本の暗色横帯があり、背鰭・腹鰭・臀鰭・尾鰭の縁辺が暗色なので、全体的に薄汚れて見える)で区別できる。

角上魚類日野店で購入した重量約2kgの個体(当日は1匹3,000円)。今回は身の部分は刺身(皮霜造り)と魚しゃぶに、また「あら」はアラ炊きに。刺身にすると、身質は柔らかすぎず、硬すぎずの丁度良い感じのしっとりしたもの。全体的に脂の乗りが良く、旨味も少なくない。美味(ただし少々物足りないような印象も)。これを魚しゃぶにして食べると、身は少々固くなるが、旨味は極めて立つ。また皮目の脂に甘味を感じる。こちらははっきり言って絶品。義理の妹を含めた4人とも箸が全く止まらず、可食部分だけで1kg強あった肉をあっという間に完食。アラ炊きにしても、皮のトロトロ感、肝をはじめとした内臓の旨味とコク、骨回りの旨味など溜まらない味。非常に美味い。