新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

317: イソカサゴ

スズキ目カサゴ亜目フサカサゴイソカサゴ
学名:Scorpaenodes evides (Jordan and Thompson)
英名:Shore rock-fish [原], FishBaseに英名表記なし

静岡県沼津市にある木負堤防での釣りの獲物で、全長約10cmの個体から摘出した「魚のサカナ」。射出骨付き。写真左は擬鎖骨に結合した状態で撮影。「魚のサカナ」と擬鎖骨との結合はかなり強く、左側の標本は擬鎖骨から外す時(=この写真撮影後)に肩甲骨の下部が破損してしまった。写真右は、擬鎖骨から何とか単離できた写真左・右側の標本の拡大図。横に細長く伸びた肩甲骨/烏口骨の上部に大きな4つの射出骨が三角形に広がるなど、「磯笠子のイソカサゴ」の基本的な特徴は、これまでに紹介したメバルやカサゴの仲間の「魚のサカナ」と共通したもの。特に側面から見た時に烏口骨の上方突起(『背鰭』)が低く、第4射出骨の後縁上部が比較的大きく後方に突出することから、イズカサゴミノカサゴを含めたカサゴの仲間のものにより似ているような印象を受ける。

ただし 1)肩甲骨孔が非常に大きい、2)射出骨が比較的長く、高さのある「三角形」を作る、3)射出骨の間隙の孔の大きさがまちまちで、特に第3/4射出骨の間隙の孔は大きい、4)烏口骨の『嘴』部がアーチ状に非常に長く伸び、「腹」側から見ると全長の約半分近い(写真上左)、5)烏口骨の『嘴』部を「背」側からみると、先端が菱形に広がっている(写真上右/一部割れている方が『背鰭』部に相当)など、次から次へと同じような形が登場するカサゴ亜目フサカサゴ科の「魚のサカナ」の中ではなかなか特徴的な形であると言えよう。



今回の魚は、1)側線が側線有孔鱗で開口する、2)胸鰭に遊離軟条がない(写真下段右)、3)胸鰭も背鰭も普通の大きさ、4)胸鰭に欠刻がない、5)背鰭は13棘9軟条(写真下段左)、6)頬部(眼下骨系)に強い2棘と隆起線があり、棘は鋸歯状にならない(写真中段右)、7)背鰭棘は著しく長くないが、短くもない、8)臀鰭棘数は3で、第1棘が著しく短いということはない、9)口蓋骨に歯がない、10)胸鰭中央軟条は長く伸びない(写真下段右)、11)鼻棘がある(写真中段左の黄丸)、12)胸鰭は17軟条、13)下鰓蓋骨上に1暗色斑がある(写真中段左の緑丸)などの形質からイソカサゴであると判断。

2012年3月に静岡県沼津市木負堤防で釣り上げたもの。イソカサゴの各鰭棘には弱毒がある(ただし筆者自身は確認していないし、今後確認するつもりもない)とのこと。サイズ的なこともありイソカサゴが市場に出回ることはほぼないと思われるが、釣れた時には取り扱い注意。今回釣れたのは1匹だけだったので、しばらく冷凍保存し「魚のサカナ」を摘出するついでに、丸ごと塩ゆでにして試食。火が通ると身はブリブリの食感になるが、残念ながら旨味を全く感じない。あまり美味くないなぁ、、、というのが正直な感想。ただし唐揚げにすると美味という情報もある。