新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

307: オニカナガシラ

カサゴカサゴ亜目ホウボウ科カナガシラ属
学名:Lepidotrigla kishinouyei Snyder
英名:Devil searobin [原]

三河湾一色漁港産の全長約12.5cmの個体から摘出した左右の標本。巨大な射出骨付き。写真右は、写真左の左側の標本を反対側から観察したもの。「鬼金頭/鬼方頭魚/鬼鉄頭のオニカナガシラ」は、同じホウボウ科のホウボウのものと比べると前後方向に寸詰まりで、予想通りより近縁(同じカナガシラ属)のカナガシラのものに酷似している。またオニカナガシラの「魚のサカナ」の射出骨や烏口骨に存在する小孔の位置もカナガシラのものとほとんど変わらない。ただし、カナガシラのものに比べると全体的に「体高」が低い印象で、その他にも 1)肩甲骨孔の位置が肩甲骨の下縁により近い、2)烏口骨の下縁の形が少々異なる、3)烏口骨の『嘴』部の先端が多少斜め下に向かうなど、些細なものであれば幾つか相違点を挙げることは可能。



「日本産魚類検索」の同定の鍵を辿り、1)第2背鰭は8棘15軟条で、基底には小棘のある骨質板がある、2)頬部に顕著な隆起線はない(写真中段左)、3)吻棘は顕著で、基底部は前に突出する(写真中段右)、4)吻背面はほぼ直線(写真中段左)、5)側線有孔鱗数は明らかに70以上もない(正確な数は未計測)、6)胸鰭は普通で、その後端は第2背鰭中央下に達しない、7)吻棘は多くの小棘からなる(写真中段右)、8)胸鰭遊離軟条先端(写真下段左の青線)は、腹鰭先端(同赤線)から眼径とほぼ同長の距離にしか達しない、9)最長吻棘は長く、眼径の1/3ほど、10)臀鰭が15軟条、11)胸鰭内面は下方に青白斑点が散在する黒色斑があり、上方は淡赤色で縁辺は青色などの形質からオニカナガシラであると判断。

ちなみに形質8に関しては筆者のような素人には判定が少々難しい『鍵』であり、またオニカナガシラとカナド(形質8の検索を反対側に辿ると可能性がある種)の胸鰭の模様は特徴が似ているため、本稿の個体のように背鰭第2棘の先端が折れてしまっている場合はより判断が難しくなる。ただし「新訂原色魚類大圖鑑」にも記載されている通り、カナドには明瞭な赤線が尾部に1本、尾鰭に2本あるのが特徴の一つ。上の写真からも分かるように本稿の魚にはこれらの赤線が全く確認できない。逆にカナドにはないはずの第1背鰭後方の1赤色円斑ははっきり確認できる。以上の特徴からも、本稿の魚はやはりカナドではなく、オニカナガシラであると判断して問題なさそうである。

愛知県の一色漁港で入手したもの。これもしばらく冷凍保存した後に、標本を摘出するため丸ごと塩ゆでにしたものを試食。繊維質の身で、熱が通ると多少パサ付く感じがないでもないが、旨味は非常に多い。甘味も感じる。美味。


【注】資料/サイトによっては「コチ亜目」や「ホウボウ亜目」に分類されている。本稿では「日本産魚類検索」および「新訂原色魚類大圖鑑」の記述に合わせて「カサゴ亜目」とした。