新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

306: ハオコゼ

スズキ目カサゴ亜目ハオコゼ科ハオコゼ属
学名:Hypodytes rubripinnis (Temminck and Schlegel)
英名:Redfin velvetfish [原] (FishBaseに英名表記なし)

三河湾一色漁港産の全長約6.5cmの個体から摘出した左右の標本。写真右は、写真左の右側の標本の拡大図。「葉虎魚/葉鰧のハオコゼ」の形は、比較的大きめの4つの射出骨がクサビ状の三角形を作ることを含め、一見するとこれまでに紹介したメバルやカサゴの仲間の「魚のサカナ」に良く似た印象を与えるもの。ただし写真などを比較しながらしっかり見てみると、1)肩甲骨の先端が鋭く尖らず『額』に相当する辺りがなだらかな曲線を描く、2)肩甲骨孔は縦長で比較的小さめ、3)射出骨は低めで、第3/第4射出骨の間隙の孔が三角形、4)烏口骨本体下部が大きく湾入する(恐らくこれが最大の相違点)、5)烏口骨の『嘴』部分が比較的長く直線的に伸びる、6)肩甲骨と烏口骨は比較的幅広の軟骨質部分で分断されているなど数多くの特徴があり、独特な形の「魚のサカナ」であることが分かる。

また「葉虎魚のハオコゼ」の烏口骨の突起部分(『背鰭』に相当)には小孔が存在する(緑矢印)。



何時ものように「日本産魚類検索」を開き、1)胸鰭下部軟条は糸状に伸びず、その先端は不分枝、2)体は無鱗、3)体は赤あるいは茶褐色、4)背鰭棘数は14(写真中段右/この写真では見にくくて申し訳ない)、5)体には小突起がない、6)背鰭前端部は少し高いが、著しく高い訳ではない、7)両顎、鋤骨、口蓋骨に絨毛状歯がある、8)胸鰭後端(写真下段左の緑線)は臀鰭基部(同赤線)に達しない、9)腹鰭は1棘4軟条(写真下段右)などの形質を確認してハオコゼであると判断。

ハオコゼは防波堤などでも簡単に釣れる魚であるが、その仲間は長い背鰭棘に刺毒を持つため取り扱いには要注意(背鰭以外の鰭棘にも毒があるとする資料などもあるが詳細は不明)。慣れていない場合は下手に針から外そうとせず、思い切ってハリスを切ってしまった方が安全である。また釣られたハオコゼが堤防の上などにそのまま放置されているのを時々見かけるが、ハオコゼの毒は死んでからも消えないので子供などが触ると危険。絶対にやめて頂きたい。もしハオコゼに刺された場合は、やけどをしない程度の熱いお湯にしばらく浸けておくと、高分子タンパク質である毒が失活して痛みが和らぐとのことだが、幸いにも筆者自身には今のところ「この方法を試す機会」が訪れていないので効果の程は分からない。

今回の魚は愛知県の一色漁港で入手したもの。冷凍保存後に「魚のサカナ」を摘出するために丸ごと塩ゆでにしたついでに試食。旨味はそこそこ含まれ、決して不味い魚ではない。ただ、熱の通った身は少々パサ付くような食感になってしまった(ただし一度冷凍したためという可能性もある)。魚体のサイズ的なこともあり、唐揚げなどの方が合うかも知れない。


【注】「WEB魚図鑑」および「日本産魚類検索 第3版」では、ハオコゼの学名を Hypodytes rubripinnis (Temminck and Schlegel) としているが、FishBase および「新訂原色魚類大圖鑑」では Paracentropogon rubripinnis (Temminck and Schlegel) を掲載し、前者では H. rubripinnis はシノニムとしている。