新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

274: ニジカジカ

スズキ目カジカ亜目カジカ上科カジカ科ニジカジカ属
学名:Alcichthys elongatus (Steindachner)
英名:Elkhorn sculpin [原]

地方/流通名ベロ、ベロカジカ(ただし標準和名ベロという近縁種もいるので要注意。両者の判別に関しては下記参照)。新潟産の全長約23cmの個体から摘出した左右の「魚のサカナ」。「虹鰍のニジカジカ」は、細長い三角形の肩甲骨に大きめの肩甲骨が開き、4つの巨大な射出骨が肩甲骨と烏口骨の間に入り込むことなど、これまでに紹介してきた他のカジカ科の「魚のサカナ」と形の基本パターンを共有しているが、キリンアナハゼのものほど左右(前後)方向に短くなく、またそれ以外のものほど左右方向に長くないという意味では、独特な「中間的」で独特な形状。写真右は、写真左の左側の標本を拡大して反対側から観察。肩甲骨先端下部は丸く突出する。烏口骨の『背鰭』の下部根元付近と肩甲骨上部の突起/第1射出骨の接するところに極小の孔が、また第1/第2射出骨、第3/第4射出骨の接線に小孔が認められる。



何時もの様に「日本産魚類検索 第2版」を開き、1)体側下部に斜めの鱗列がない(写真下段右)、2)頭部背面は小骨板によって被われない、3)前鰓蓋骨最上棘は著しく大きくない、4)第1背鰭は10棘、5)前鰓蓋骨棘は最上のものが最も大きい、6)腹鰭は1棘2軟条、7)側線鱗は皮下に埋没する、8)後頭部に棘が全くない(写真中段左)、9)下顎は上顎より前に出ない、10)鰓膜は癒合し峽部を横切る皮褶を形成する、11)第1背鰭の各鰭は鰭膜で連続する、12)臀鰭には遊離棘がない、13)第1背鰭と第2背鰭は近接する、14)側線鱗は尾柄部まである、15)側線上の皮弁は前方部に集中しない、16)臀鰭は14軟条(写真中段右)、17)眼上部に総状(写真下段左の緑丸)の、後頭部には単一形/棒状(同赤丸)の皮弁がある、18)尾鰭後縁は丸い、19)前鰓蓋骨に4棘あり、その最上棘は4叉する(単一形でない/写真下段右の紫丸)などの形質から、ニジカジカであると判断。外見の良く似た標準和名ベロとは、形質17と19で区別出来る(ベロでは前鰓蓋骨最上棘が単一形で、後頭部の皮弁が総状)が、上記したようにニジカジカが「ベロ」「ベロカジカ」という名で流通していることも多いようなので要注意。

これも角上魚類日野店の開店当日に購入したもの(なかなか新鮮な個体であったが、同サイズ3匹で200円と格安)。店頭表示は「サドカナ」となっていたが、今時では珍しくネット検索でもこの名前が(ニジ)カジカのものであることを示す記述がヒットしない(2011年10月現在)。非常に局所的に使われている地方名なのだろうか?下ろしている時には、独特の(少なくとも筆者に取っては食欲をそそる)香りがした。今回は販売員さんのお勧めに従って煮付けに。骨からの身離れも良く、旨味も少なくない。なかなかの美味。これまでカジカ類は味噌汁にするのが定番と思っていたが、今後は煮付けも試してみる必要がありそう。

【注】その後の別な機会に「佐渡カナガシラ」と表記されていた。なるほどそう言う意味かと得心したが、残念ながら標準和名カナガシラとは「亜目」のレベルで異なる魚であるので念のため。