新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

308: アカハゼ

スズキ目ハゼ亜目ハゼ科ゴビオネルス亜科アカハゼ属
学名:Amblychaeturichthys hexanema (Bleeker)
英名:Pinkgray goby [原]

愛知県西尾市の一色漁港産の全長21cmの雄個体から摘出した左右の「魚のサカナ」。「赤沙魚/赤鯊のアカハゼ」は、巨大な射出骨の下に極薄の肩甲骨が貼り付いているなど、これまでに紹介したハゼ科の「魚のサカナ」と基本的な特徴を共有しており、その中でもマハゼのものに最も良く似た印象。ただし、1)肩甲骨孔が細長い、2)烏口骨の『背鰭』部分が低い、3)烏口骨の『嘴』部が外側方向に少々反ることなどはマハゼのものとは異なる点。第4射出骨後縁の「引っ掻き傷」の様な部分は普通のサイズだが、それ以外の射出骨上の「傷」はさほど深くなく、また各射出骨の間隙に孔も開かない。

「赤沙魚のアカハゼ」も烏口骨の『嘴』部の背側は平面状に折れ曲がり、「庇」の様に『嘴』部の本体側上方に広がる。



「日本産魚類検索 全種の同定 第2版」を開き、1)体側に側線はない、2)下顎先端は円錐状に突出しない(写真下)、3)背鰭は2基、4)第1背鰭棘数は8(写真下段左)、5)頬に横列皮褶がない、6)眼下に眼を収納するくぼみがない(写真下)、7)下眼瞼がない(写真下)、8)腹鰭は完全な吸盤である、9)体形が伸長している、10)口は多少とも傾斜する(写真下)、11)背鰭起点から背中線上に皮質隆起がない、12)第1背鰭第1棘は軟らかくて曲げられる、13)鰓蓋をあけた時、鰓孔の後縁にあたる肩帯上に指状で楕円形をした縦長の肉質突起がない、14)前鼻孔下方に膨出部がない(写真下)、15)舌の先端は抉れない(写真中段左)、16)下顎に3対の髭がある(写真中段右)、17)尾鰭に眼状斑がない(写真下段右)、18)第1背鰭に黒色斑がない(写真下段左)などの形質からアカハゼであると判断。アカハゼ属の魚は日本近海はもとより世界中でも2種(どちらも下顎に3対の髭がある)のみで、もう1種のアカハゼ属であるコモチジャコとは形質18(コモチジャコには第1背鰭に黒色斑がある)で区別できる。またコモチジャコの体長はせいぜい5cm程度なので、20cmを超えるような個体はアカハゼであると考えることが可能。

ちなみにアカハゼの学名の種小名"hexanema" は「6本の糸」の意味(hexa: 6本、nema: 糸/線)で、「下顎の髭」に由来することが明らか。またどうやら鱗が非常に剥がれやすいようで、店頭で見かけた時は何時も「丸裸」になっているような印象がある。

三河一色さかな村の深谷水産で購入(当日朝に水揚げされたばかりのアカハゼが数十匹盛られて200円!)。筆者の現住地付近の市場や鮮魚店にアカハゼが並んでいるのを2011年秋だけでも計3回目撃したが、量が多過ぎ/鮮度が今ひとつ/タイミングが悪い(=見つけた時点で既に別の魚を大量購入済み)などの理由で何となく二の足を踏んでしまい、実は今回が初購入。ということで今回は「松葉おろし」にして、定番であると思われる天ぷらに。ネット上で見られる食味情報では美味/不味が混在しているが、少なくとも今回のアカハゼはふっくらとした上質な身質に上品な旨味があってかなり美味い。また食味評価に良く書かれている「水っぽさ」もほとんど感じなかった。強いて選ぶならば筆者自身は塩だけの方が好みだったが、天つゆでも当然美味。全く箸が止まらないまま、家族3人であっという間に完食。上の写真でも分かるように見た目こそ今ひとつだが、この味がこの値段で味わえるというのは「根っからの魚っ食い」にとっては本当に有り難いことかと。