新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

147: コイチ

スズキ目スズキ亜目ニベ科ニベ属
学名:Nibea albiflora (Richardson)
英名:Yellow drum [原], Flower croaker, White flower croaker

香川産の体長約45cmの鮮魚(抱卵した雌)から摘出した左右の標本。全体的にはスズキ目スズキ亜目の「魚のサカナ」の基本形だが、1)烏口骨の『嘴』部分先端が太く独特の形である、2)肩甲骨孔が比較的小さく上方にある(何となく「優しい目」という印象を受ける)など、もちろんこの「魚のサカナ」ならではの特徴はある。また魚体のサイズの割に小さいなというのが摘出した時の第一印象。ちなみに同じニベ科のシログチのものとは余り似ていない。



「日本産魚類検索 全種の同定 第2版」のニベ科の魚の「同定の鍵」を辿ると、コイチと近縁種のニベの「枝」までは容易に到達できるのだが、さてこの2種をしっかり区別しようとすると今度は非常に難しい。写真上からも分かるように今回の魚は各鰭の色も体色も非常に黄色っぽかった(というよりほぼ金色だった)ので「コイチかな?」とある程度は予想できた訳だが(ちなみに店頭表示も「コイチ」)、1)側線上方の斜帯が中断し乱れる(ニベではこれが乱れない)、2)頭長が最大鰓耙長の12倍以上(写真中/今回は最大鰓耙長が約5mmで頭長が約80mmと約16倍)、3)第1鰓弓の鰓耙数が21以下(写真下/今回の個体の鰓耙数は「15」の右に痕跡的な「16」があるため、10+6で16。ちなみにニベでは22以上)という3つの形質を見分けることで、ようやく「コイチ」と判断できる。他にもコイチは上顎先端の方が下顎先端より前に出るが、ニベでは両者がほぼ同じ位置にあるという見分け方もある模様。

あと今回もう一つ楽しみにしていたのは『コイチの耳石』。耳石が大きい故に「イシモチ(石持)」と呼ばれていた、現標準和名シログチの仲間で大型サイズの魚種とくれば、耳石の大きさはどのくらいなんだろう、、、と興味を持ってしまうのも当然のこと。結果は予想通り、最長のところで約1.4cmという巨大サイズ。また中央付近内側に盛り上がった部分があり、厚みもかなりのものだった。

八王子総合卸売センター内、高野水産で購入(キロ当たり800円)。今回は3枚に下ろして塩焼きに。皮目には脂があり、身質も悪くなく、上品であっさりとした旨味があってなかなか美味。ただし「なかなか」を越える美味さではないのも事実で、連れ合いには「味がちょっと薄くない?」と言われてしまった、、、ネット上では「鮮度落ちが早い」という記述も見かけるので、将来的にはもっと鮮度の良い魚(自分で釣り上げたものなど)で確認してみたいところ。