新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

148: シラウオ

キュウリウオ目シラウオシラウオ注1
学名:Salangichthys microdon (Bleeker)
英名:Japanese icefish [原], Glassfish, Noodlefish, Whitebait、Whitefish

青森県産の体長約4cmの個体から実体顕微鏡下で摘出した左右の標本。「魚のサカナ」の上下左右が分かるように、右側の標本には射出骨を1本残して調製(射出骨が結合している場所が肩甲骨/烏口骨上部となる)。写真(もちろん顕微鏡写真)からも分かる通り、石灰化(骨化)していないために非常に脆弱であり、かつ右側の標本の左右が1.2mm、上下が1.3mmという極小サイズでもあるので、肉眼での摘出はほぼ不可能であると思う。

肩甲骨孔は小さめで、肩甲骨後部下端(境目がはっきりしないので、烏口骨の一部である可能性もある)が後方に向かってくさびの様に尖る。また烏口骨上部の突起は非常に細長く上方に伸び、逆に『嘴』の部分は比較的短く、その先端(擬鎖骨と結合している部位)は平たくなっている。キュウリウオ目(もしくはサケ目/注1参照)の「魚のサカナ」ということで中烏口骨の存在が予想されたが、骨を摘出する時に折れてしまったのか、もしくはまだ伸長していない(相当する部位に三角形に骨が盛り上がった領域がある)のか、今回は中烏口骨の存在を確認することはできなかった。

シラウオは成長すると最長で10cm程度になるが、大きな個体の「白魚のシラウオ」がイカナゴカタクチイワシのように石灰化するかどうかは今後の観察課題、、、としていたが、岡山県水の「シラウオ」のページによると、シラウオは多くの点で発生初期の状態を残したまま成熟し、骨の多くは骨化がほとんど進まず軟骨状態であるとのこと。つまり「白魚のシラウオ」も石灰化/骨化しない可能性が高そうである。

同時に摘出したシラウオの耳石。最長の部分が約0.36mm。

八王子綜合卸売協同組合・やまぎし水産で購入。今回はそのまま「生」と「卵とじ」にして食したが、ちょっと苦みがある大人の味(?)で美味。ただし今回の魚は多少「泥臭さ」が強いようにも感じた。これまでに寿司屋などで食べたもう少し大きなシラウオではこのように感じたことがなかったので、それがシラウオの風味という訳ではないように思われるが、、、もしかしたらサイズによっても風味が変化するのだろうか?また横川吸虫の中間宿主であることが知られているので、生食する場合は自己責任で(感染しても重篤な症状を引き起こすことは少ないようだが、万が一の場合でも当方は一切責任は持ちません)。

春先に「踊り食い」で食べられる「シロウオ/素魚」としばしば混同されるが、シロウオ(地方名イサザなど)はスズキ目ハゼ亜目シロウオ属に分類される魚であり、本稿のシラウオとは分類上かなり離れた魚なので注意。

日本に生息するシラウオ科の魚は3属4種だが、下顎が上顎よりも前に出て、胸鰭軟条数が13本以上(写真1/ちなみに中央下部に「魚のサカナ」の『嘴』に相当する部分が、上部に烏口骨の上部突起が見えている)で、アリアケシラウオと、口蓋骨歯があること(写真2)でアリアケヒメシラウオと、また尾柄部に黒点がないこと(写真3)でイシカワシラウオとそれぞれ区別できる。もっともアリアケシラウオとアリアケヒメシラウオ有明海周辺のみの分布のため、青森産という時点で可能性を除外できる訳だが。

写真1

写真2

写真3

注1:「日本産魚類検索 全種の同定 第2版」と「新訂原色魚類大圖鑑」では、シラウオは「サケ目シラウオ科」として掲載されているが、Joseph S. Nelsonの著作「Fishes of the World, 4th Edition」(2006) の出版によりキュウリウオ目が独立の目とされたのに合わせ、現在 FishBase では「キュウリウオ目シラウオ科」に分類されている。本稿ではそれに合わせ「キュウリウオ目」とした。

(10/25/10 改稿)