新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

149: チゴダラ

タラ目チゴダラ科チゴダラ属
学名:Physiculus japonicus Hilgendorf
英名:Japanese hakeling [原], Japanese codling

別名どんこ(ドンコ、鈍子)。福島産の体長約30cmの個体から取り出した左右の標本。射出骨付きだが、その各パーツの形が非常に独特で、一部の上部がノコギリのようにギザギザになっていたり、そこそこ大きめの孔が開いていたりと非常に面白い。肩甲骨孔の形が逆三角形で、「魚のサカナ」全体で見ると困ったような、泣いているような顔つきに見える。また烏口骨の『嘴』部分の先端が少々外側に曲がる。

エゾイソアイナメ [学名:Physiculus maximowiczi (Herzenstein)、英名:Brown hakeling] との区別は非常に困難で、以前から両者は同種であるとの考えもある(実際 FishBase でも、エゾイソアイナメ P. maximowiczi をチゴダラ P. japonicus のシノニム扱いにしている)。ここでは「日本産魚類検索 全種の同定 第2版」の同定の鍵を辿り、1)腹鰭が糸状にならず6軟条、2)臀鰭起部が第2背鰭起部のほぼ真下(写真1)、3)第1背鰭が糸状に伸びない(写真1)、4)腹部発光器が丸く、左右の腹鰭起部を結ぶ線より後方に位置する(写真2)、5)第1背鰭が9軟条、6)吻端近くの無鱗域は狭い(写真3)という形質から、チゴダラ/エゾイソアイナメであることが確定。あとは、7)体色が淡褐色(写真1)、8)眼径(写真3の赤線で区切った右側)が大きく、吻長(赤線で区切った左側)の2/3より長いことから「チゴダラ」と判断した。

写真1

写真2

写真3

八王子総合卸売センター内、高野水産で購入。今回はぶつ切りにしたものを水から炊き、味噌で味付けしてから肝を投入した「ドンコ汁」に。季節的にまだ肝はさほど大きくなかったが、身からも良い出汁が十分出て美味。身離れも良過ぎるくらい。これで非常に安価(100円/匹程度)というのは庶民には本当にありがたい。まあ独特の香りがあるので好き嫌いが分かれる可能性もあるが、、、

標準和名の「チゴダラ(エゾイソアイナメ)」よりも、別名である「ドンコ」の方が全国的に有名。ただし標準和名に「ドンコ」と付く魚、例えばドンコ(スズキ目ハゼ亜目ドンコ科)や、テレビの影響で知名度の上がった深海魚のアカドンコカサゴ目カジカ亜目ウラナイカジカ科)などとは分類上は遠縁の魚となる。

耳石の形も「巻貝の殻」もしくは「雲」のような独特の形。