新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

284: ホウズキ

スズキ目カサゴ亜目メバル科ホウズキ属
学名:Hozukius emblemarius (Jordan and Starks)
英名:Honeycomb rockfish [原](FishBaseには英名記載なし)

静岡県下田産の全長約30cmの抱卵雌個体から摘出した左右の「魚のサカナ」。ホウズキは、後述するようにメバル属のアコウダイなどに外見がそっくりだが、ホウズキ属という別の属(ただし同じメバル科ではある)に分類される魚。ということで「鬼灯/酸漿のホウズキ」の形がどのようになっているのかは興味深かったが、やはりメバル科メバル属の「魚のサカナ」の基本形で、個人的には少々残念だったのは否定出来ない。烏口骨の上方突起部(『背鰭』)の高さが低めであることから、どちらかと言えばメバル属よりもカサゴ属の「魚のサカナ」に近い印象を受ける。



今回の魚は、1)側線は溝状でない、2)胸鰭に遊離軟条がない、3)胸鰭も背鰭も普通の大きさ、4)胸鰭に欠刻がない、5)背鰭は12棘12軟条(写真中段左)、6)頬に棘がない、7)胸鰭上半部の後縁は丸い、7)眼窩下縁に棘がある、8)尾鰭後縁は截形(写真中段右/少なくとも中央部が切れ込んでいるようには見えない)、9)吻、主上顎骨(写真下段左)、下顎(写真下段右)は小鱗に被われる、10)伊豆下田産という形質/産地などからホオズキであると判断。ちなみに体形・体色が良く似たメバル属のアコウダイとは形質5と8(アコウダイは背鰭が13棘で尾鰭が浅く切れ込む)により、同じホウズキ属のベニメヌケとは形質9と分布域(ベニメヌケは吻、主上顎骨、下顎が小鱗に被われず、天皇海山に分布)により区別することが可能。またホウズキはアコウダイほど大きくはならないとのこと。

八王子総合卸売センター内、高野水産で購入(当日はキロ2,000円/0.52kg)。店頭では「メヌケ」と言われたが、少なくとも関東の市場ではアコウダイ/ホウズキはほとんど区別されていないとのことで、今回の個体も帰宅後に「検索」してようやくホウズキであることが判明したもの。水圧の関係で目と胃袋が飛び出していた(特に胃袋は口の中に裏返り、その中に肝臓が巻き込まれているというなかなか「エグい」状態であった)ものの、鮮度はかなり良かったので、まずは3枚に下ろし一部を生で試食。脂は非常に乗っており、そこから来る甘味は感じるが、旨味はそれほどでもないような印象。そこで、アラで取った出汁で鍋に。熱を通すと身がブリブリに固くなるが、食感は悪くない。口の中で咀嚼していると旨味がじわりと浮き上がってくる。なかなかの美味。ただ決して安くはない「キロ単価」のことを考えると(今回はそれでも相場よりかなり安いはず)、「コストパフォーマンス的に少々難あり」というのが正直なところ(あくまで個人的な見解だが)。