新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

189: イトヒキアジ

スズキ目スズキ亜目アジ科アジ亜科イトヒキアジ属
学名:Alectis ciliaris (Bloch)
英名:Ciliated threadfish, African pompano, Cobblerfish, Indian threadfin trevally, Pennantfish, Round-headed pennantfish, Shoemaker, Thread pompano, Threadfin trevally

愛知県一色産。『糸』のように長く伸びる、第2背鰭および臀鰭の前方数軟条を除いた全長が約22cmの個体(幼魚)から摘出した左右の標本。「魚のサカナ」の『頭部』(写真右)の形や、烏口骨下にあるカーテン様の構造などはアジ類の「魚のサカナ」の基本形なのだが、「糸引鯵のイトヒキアジ」では、烏口骨の『嘴』部分が後方に向かい非常に長く伸びるのが最大の特徴。その形は非常に美しく、まるで『天女の羽衣』のようでもある。また肩甲骨孔の上に大きめの凹みがあり、肩甲骨上部が『庇』のように立体的になる。故に『彫りが深い』顔立ちという印象になる。


イトヒキアジは成魚になると全長1mに達するが、このような個体では幼魚時代の特徴である『糸』がなくなる。また近縁のウマヅラアジにも幼魚時代には同じような『糸』が存在するのだが、「日本産魚類検索 全種の同定 第2版」では 1)イトヒキアジでは眼の前方の頭部背縁が凹まないこと(写真上段右)が「同定の鍵」として挙げられている。他にも2)腹鰭が普通の形であること(写真下段左/ウマヅラアジでは腹鰭軟条も糸状になる)、3)背鰭の先端部に暗色斑がある(写真下段右の赤丸/ウマヅラアジにはない)ことなどでも区別が可能。またイトヒキアジには眼の上を縁取る太めの黒線があり(写真上段右)、前回紹介したアイブリと同じように『眉毛』があるように見えて面白いのだが、ネット検索で引っ掛かってくる写真を見る限りウマヅラアジにはこれがない、もしくはあまり目立たない模様。

愛知県一色漁港にある「三河一色さかな村」で、他の魚と一緒に「トレイ一盛り数百円」で購入したもの。今回は刺身と塩コショウしてオリーブオイルでソテーに。刺身の方は、身質は悪くなく旨味もあるのだが、同時にクセのようなものも少なからず感じた。もう10年以上前だが、釣りの獲物として食べたときはもっと美味しかったような記憶があるので、もしかしたら鮮度の問題なのかも知れない。ソテーはなかなか美味。