新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

192: ミドリフサアンコウ

アンコウ目フサアンコウ亜目フサアンコウ科フサアンコウ属
学名:Chaunax abei Le Danois
英名:Goosefish, Sea toad, Coffinfish(フサアンコウ科の魚の一般名)

愛知県一色産の第2シリーズ第8回。体長約20cmの個体から、擬鎖骨(下側のアーチ状の骨)/射出骨(上方に伸びた長い骨)/胸鰭の軟条(射出骨の上側に結合した鰓状の部分)などもそのままに摘出した標本。アルコール処理などをする前の摘出直後のもの。「魚のサカナ」の位置が分かりやすいように、細い赤線で縁取りしてある。


各段写真左は「魚のサカナ」を体の内側(射出骨と反対側)から、写真右は体の外側(射出骨側)から見たところ。また上段2枚が摘出直後、下段2枚は室温で1日乾燥させた後の様子。これらも「魚のサカナ」部分を細い赤線で縁取りした。

1)肩甲骨と烏口骨の結合部分が良く分からない、2)比較的小さい「魚のサカナ」に結合した軟骨質の射出骨が非常に長く太く伸びる、3)その長い射出骨の先端部に胸鰭軟条が貼り付いているなど、基本的な部分は以前紹介したキアンコウのものと共通。ただし「緑房鮟鱇のミドリフサアンコウ」を含むこの部分には、1)射出骨がより細長い、2)射出骨と「魚のサカナ」(肩甲骨/烏口骨)の結合角がほぼ垂直で、射出骨が「魚のサカナ」の片側から伸びているように見える(写真右2枚参照/故に射出骨側からは肩甲骨孔はほとんど見えない)、3)烏口骨上方の突起(『背鰭』部)が明瞭で長いが、その先端部は少々屈曲する(写真上段右)、4)烏口骨の先端(『嘴』部)は直線的に長く伸びるなどの特徴がある。

別の個体の「緑房鮟鱇のミドリフサアンコウ」の部分だけを取り出して観察したもの。写真左は摘出直後、写真右はエタノール処理後1日乾燥させた様子。摘出直後からキアンコウのものより「魚のサカナ」らしく見える。烏口骨の『背鰭』部分は軟骨質のため、乾燥すると収縮して折れ曲がってしまう。

「魚のサカナ」を取り出した個体の表裏。背側には赤くブヨブヨの体表面に緑円斑が点在しており、腹側は白い。日本近海にフサアンコウ亜目は3種しか生息していないため同定は比較的容易。今回の魚は、1)誘因突起のある凹みの後端が眼の前縁を結ぶ線を越えることでハナグロフサアンコウと、2)体背面中央部と背鰭軟条起部に大きな黄色斑がなく、背鰭軟条前方に凹みがないことでホンフサアンコウとそれぞれ区別できる。ちなみに種小名の"abei"は、日本の魚類学者・阿部宗明(ときはる)氏への献名。

愛知県一色漁港にある「三河一色さかな村」で、他の魚と一緒に「トレイ一盛り数百円」で購入したもの。写真上で分かるように、口の下腹側の表皮に切れ目を入れ、皮を後ろ方向に引っ張るときれいに剥がすことが出来る。今回はこの状態から頭を落とし、内臓を除去してから唐揚げに。上品な旨味があってなかなかの美味。ネット検索すると、干物などにしても美味いらしい。

顔のアップ。なかなか愛嬌のある顔をしています。