新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

237: イトフエフキ

スズキ目スズキ亜目フエフキダイ科フエフキダイ属
学名:Lethrinus genivittatus Valenciennes
英名:Thread-fin emperor [原], Lance emperor, Lancer, Large-eye bream, Longspine emperor, Pigface bream

手持ちの資料によれば、沖縄名イノームルー、ムルーイユ(他のフエフキダイ属の魚と区別されていない?)。沖縄産の体長約22cmの雄個体(白子持ち)から摘出した左右の標本。「糸笛吹のイトフエフキ」の形は、同じフエフキダイ属の「魚のサカナ」の中でも、特に直前のエントリーで紹介したホオアカクチビのものに酷似しているが、相違点として 1)肩甲骨孔がより丸みを帯びること、2)烏口骨本体が多少左右に短めで、本体後縁下部が多少伸びること、3)烏口骨の『嘴』部分が少々曲がることなどを一応挙げることができる。ただ実際問題として、両者を並べることなく、どちらの魚由来のものであるかを区別するのはかなり困難なのではないだろうか。

「糸笛吹のイトフエフキ」も、他のフエフキダイ属の「魚のサカナ」同様に烏口骨の『背鰭』部分が大きくうねる。



何時も通り「日本産魚類検索」の同定の『鍵』を辿り、1)頬部に鱗がない(写真中段左)、2)胸鰭軟条は「13」、3)背鰭は10棘9軟条、4)胸鰭基部の内側に小鱗がある(写真中段右)、5)体側中央部に大きな暗色斑がない、6)背鰭第2棘条が伸長する(この個体では伸長しているように見えないが、実はこの棘条の先端部が折れていることが写真下段左から確認できる)などの形質を確認してイトフエフキであると判断。念のため「新訂原色魚類大圖鑑」にもあたり、7)眼隔域が平坦、8)両顎前部に犬歯、側方に臼歯が並ぶ(写真下段右)、9)主上顎骨側面に小突起あり(写真下左の赤矢印、および主上顎骨の標本を撮影した写真下右の赤四角)、10)腹面は淡い、11)胸鰭上部に暗色斑がある(この個体では薄い)ことなど、その他のイトフエフキに関する記述と矛盾しないことも確認した。

泊いゆまち内・かねは水産で購入した「トレイ1盛り1,000円」の中に大小2匹盛られていたもの。今回は大型の個体は刺身に、小型の個体は三枚に下ろして皮付きのままバター焼きに。刺身にすると、やはり少々柔らかいのだが、美しい白身で淡白な中にも旨味を少なからず感じる。なかなかの美味。ただし個人的な好みで言えば、この魚にはバター焼きの方がより合うと思われる。こちらは非常に美味い。