新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

243: ハリセンボン

フグ目フグ亜目ハリセンボン科ハリセンボン属
学名:Diodon holocanthus Linnaeus
英名:Balloonfish [原], Balloon porcupinefish, Baloon pufferfish, Bloched porcupine fish, Freckled porcupinefish, Hedgehog fish, Long-spine porcupinefish, Spiny balloonfish, Spiny pufferfish, Fine-spotted porcupinefish

沖縄名アバサー(ハリセンボン科の魚の総称)、イノーアバサー、アバストト。宜野湾漁港の釣りもので、全長約20cmの個体から摘出した「魚のサカナ」の標本。射出骨付き。長い射出骨が作る3つの孔と肩甲骨孔(この写真では最下方にある細長い涙型の孔)の計4つの孔が並ぶというフグ科の「魚のサカナ」と基本的な特徴を共有しているが、「針千本のハリセンボン」は、1)これまで摘出/紹介したフグ科のものと比べると肩甲骨が比較的小さく、上記した通り肩甲骨孔が細長い涙型であること、2)烏口骨の上方突起(『背鰭』)が射出骨との結合部から非常に離れており、また内側に大きく立ち上がること(下記参照/この写真でははっきりとは見えない)、3)烏口骨の『嘴』部分が非常に太く頑丈な印象であることなど、それなりに独特な形状。また写真左の左側の標本の『嘴』部分には、(見にくいが)小孔が開いている。写真右は、写真左の右側の標本の拡大図。フグ科の「魚のサカナ」に比べて、全体的に波打っている様にも見える。

「魚のサカナ」の前方、斜め上から撮影。烏口骨の上方の『背鰭』部分(右側)と第4射出骨の後方の『せり出し』部分(左側)が立ち上がっているのが観察出来る。



「日本産魚類検索 第2版」によると日本近海に生息するハリセンボン科の魚は3属7種類で、この内ハリセンボン属の魚は4種。今回の魚は、1)体にある棘は可動性(写真中段左)、2)背鰭と尾鰭に黒点がない(写真中段右)、3)尾柄部背方に棘がない(写真中段右)、4)鰓孔前方に黒色斑がない(写真下段左)、5)体の黒色斑に白い縁取りがない(写真中段左)などの形質からハリセンボンであると判断した。ちなみに「原色日本海魚類図鑑」や「百鯛図譜―胸鰭から手への進化を探る」(どちらも桂書房刊/現在は絶版)の著者である津田武美氏(2010年末に惜しくも亡くなられたそうです。合掌)の観察によると、ハリセンボンの「針」は、300~500本、平均して314本であったとのこと(参考サイト:富山県民生涯学習カレッジ・テレビ放送講座 平成元年度テキスト「第6回 人魚の海」)。

ハリセンボンにはいわゆる「フグ毒」であるテトロドトキシンが含まれないので、肝臓なども食べられる(沖縄県衛生環境研究所による「沖縄産ハリセンボン類の調査」を参照)。手にチクチク刺さる「針」に非常に手こずりながら、何とか皮を剥いでみたのだが、骨の周りに僅かに肉が付いているだけで可食部分がほとんどない(写真下段右/3枚に下ろした後の「アラ」では決してないので誤解なきよう)。今回はここからブツ切りにして味噌汁に。骨にこびり付いたようなブリブリの身をこそげるようにして食べると、確かに旨味もあってなかなか美味。が、量的にあまりにも物足りない、、、というのが正直な感想。ちなみにこの魚の口の中にはウオノエ類のご夫婦が、、、

ここから5エントリーは、同行者が宜野湾漁港で釣って提供してくれた「雑魚のザコ」シリーズ・沖縄編(パート2)になります。