新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

244: ギチベラ

スズキ目ベラ亜目ベラ科モチノウオ亜科ギチベラ属
学名:Epibulus insidiator (Pallas)
英名: Telescopefish [原], Slingjaw wrasse, Jawslinger, Sling-jaw wrasse

沖縄名タンメータニクーヤー(何と「おじいの男の急所にかみつく」という意味らしい)、ウーヤマグナー、クサバー、クサビ。体長約12cmの沖縄県宜野湾での釣りものから摘出。これまでに摘出/紹介してきたベラ科の「魚のサカナ」の形がかなり多様であるというのは前述した通りだが、「義知倍良のギチベラ」もなかなか特徴的。肩甲骨の全体の印象などはヒトスジモチノウオのものに似ているように見えるものの、1)肩甲骨の前側下部が比較的突出すること、2)肩甲骨孔が涙型であること、3)烏口骨上方の『背鰭』部分に『仏様』のような突起がない(ただし少々尖る)こと、4)烏口骨下部の湾入部分がほぼ三角形で浅いこと、5)烏口骨の後方上縁(『背鰭』)が大きく弧を描き、『嘴』部分全体では太めでがっしりした印象であることなど、相違点を列挙することが可能である。



ギチベラの体色は性別や成長の度合いによって様々ということだが、FishBaseによるとギチベラ属は世界でも1属2種のみ(ちなみにもう1種は西太平洋に生息する Epibulus brevis Carlson, Randall & Dawson)なので、同定は比較的容易と思われる。今回の魚は、1)側線は体側後部で中断する(写真中段左)、2)前鰓蓋骨後縁は円滑、3)背鰭棘条数は「9」、4)尾鰭分枝軟条数は「12」(写真中段右)、5)口は著しく伸出し(写真下段左)、閉じた時は下顎が後方へ突き出る(写真下段右)という形質を確認してギチベラであると判断。とにかく口が前方に非常に長く伸びることが、ギチベラにおける最大の形態的特徴であることは言うまでもない。検索してみるとYouTubeに「ギチベラの捕食シーン」の高速度撮影動画がアップされていたので、この口をどのように使うのか興味のある方はこちらからどうぞ。

鮮度的なこともあり、今回は食していないので味は分からないが、ネット上の情報によれば、淡白ながらなかなか美味であるとのこと。実際、可食部分はそれなりに多そうに思われた。

注:「タンメー」が「おじい」、「タニ」は「男の急所」、「クーヤー」とは「かみつく/くわえるやつ」だそうで。逆に「タンメータニクーヤー」でネット検索すると、どうやら沖縄の一部の地域ではアオヤガラヘラヤガラも同じ名前で呼ばれることがあるとのこと、、、なるほど。