新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

246: メギス

スズキ目スズキ亜目メギス科メギス亜科メギス属
学名:Labracinus cyclophthalma (Müller and Troschel)
英名:Spottysail dottyback [原], Fire-tail devil, Firetail dottyback, Giant dottyback, Red dottyback

資料によると、沖縄名アカベ、イカー、ウフミー、イコー、アハヨホー(ただしこれらの名前のいくつかは他の魚に対しても使われる模様)。宜野湾の釣りもので、全長約10cmの、体色から判断して恐らく雄個体から摘出した左右の標本。「メギス(漢字不明)のメギス」の最大の特徴は、肩甲骨前縁が直線的で、かつ肩甲骨の下部が丸みを帯びながら下方に伸長すること。丸く大きめの肩甲骨孔とも相まって、筆者の眼には『牛』の横顔のように見えるのだが如何だろうか。また烏口骨の上方突起(『背鰭』)部が少々斜め後方に突出し、そこに小孔が開いているという特徴は、ベラ科のオハグロベラのものと共通しているように思われるが、調べた限り両者の間に直接の系統関係はなさそうである。烏口骨下部は卵形に湾入する。



「日本産魚類検索 第2版」では、メギス科/タナバタメギス科/センニンガジ科が独立して掲載されているが、現在ではこれらが「メギス科」にまとめられ、それぞれが亜科として扱われている模様。また日本に分布するメギス科の魚は、メギス亜科(2属6種)/タナバタメギス亜科(1属2種)/センニンガジ亜科(1属1種)の計4属9種のみで、これらの内、体型が大きく異なるセンニンガジ(センニンガジ亜科)とメギス(日本に分布する唯一のメギス属の魚)を除けば、どれも体長数センチ程度の小型種であるとのこと。今回の個体はこれらの中では明らかに大型個体であり、「検索」の『鍵』も、1)背鰭が2棘25軟条(写真中段左右/左の赤矢印は棘を示す)、2)側線有孔鱗数が体側部で50以上、尾柄部で20程度(写真下段左/正確な数は計測しなかった)という2つの形質を確認するだけでメギスであると判断できる。念のため『新訂原色魚類大圖鑑』にも当たり、3)口が大きく斜位で、上顎後端が眼の前縁に達すること、4)下顎は上顎より長いこと(以上写真下段右)、5)両顎に3対の犬歯状歯があること、6)背鰭と臀鰭の後端は尖ること(写真中段右)など、メギスの形質と矛盾しないことも確認した。

今回の魚は口にしていないので、食味は不明。ただ魚種の同定をしている時に、かなり磯の香りを感じたことを付記しておく。

ちなみに干物などにされ日本各地(少なくとも新潟、富山、金沢、駿河湾三河湾、京都で確認)で「メギス」という名前で流通している魚の標準和名は「ニギス」(体型がキスに似ているので「似鱚」。ただしキス(シロギス)とも「目」のレベルで異なる遠縁の魚なので念のため)であり、ニギス目(もしくはキュウリウオ目)ニギス亜目ニギス科に属する全く別の魚である。本稿で紹介した標準和名メギスは、産地でもほとんど食用にされていないと思われるもの(=本物の「メギス」の干物が市販されている可能性は限りなくゼロに近い)。混同なきよう。