新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

252: キヌバリ

スズキ目ハゼ亜目ハゼ科ゴビオネルス亜科キヌバリ
学名:Pterogobius elapoides (Günther)
英名:Serpentine goby [原](FishBaseには英名表記なし)

地方名ごり(ハゼ科の小型魚の総称として使われるもの)、海ごり(能登地方/下記参照)。全長約8.5cmの神奈川県逗子付近での釣りものから摘出した左右の「魚のサカナ」。「絹張のキヌバリ」は、巨大な射出骨の下にへばりつくように肩甲骨が存在するという特徴を含め、「魚のサカナ」全体の形も各パーツの形もマハゼのものに酷似しているが、1)肩甲骨孔がより大きいこと、2)第1/第2、および第2/第3射出骨の間に大きめの孔が開くこと、3)烏口骨の上方突起(『背鰭』)部が多少細めな印象を与えること、4)射出骨表面にある引っ掻いたように見える領域が多少広いことなどを相違点として挙げることは可能。



ハゼ科の魚は非常に種類が多く(全世界で2,000種超が生息しているとか)、その同定には多数の形質の非常に小さな差異を見分けなければならないのだが、この科の魚には小型の種も多いためにしばしば困難を伴うというのが実際のところ。今回の魚はその特徴的な模様/体色から「キヌバリ」であることがほぼ確実であったが、念のため「日本産魚類検索」の『同定の鍵』を辿り、 1)体側に側線がない、2)下顎先端は円錐状に突出しない(写真中段左)、3)背鰭は2基、4)第1背鰭棘数は8、5)頬に横列皮褶がない(写真中段左)、6)眼下に眼を収納するくぼみがない(写真中段左)、7)下眼瞼がない(写真中段左)、8)腹鰭は完全な吸盤である(写真中段右)、9)体形が伸長している、10)口は多少とも傾斜する(写真中段左)、11)背鰭起点から背中線上に皮質隆起がない、12)第1背鰭第1棘は軟らかくて曲げられる、13)鰓蓋をあけた時、鰓孔の後縁にあたる肩帯上に指上で楕円形をした縦長の肉質突起がない、14)前鼻孔下方に膨出部がない(写真中段左)、15)舌の先端は深く凹まない(写真下段左)、16)顔のどこにもひげがない(写真中段左)、17)臀鰭基底は第2背鰭基底とほぼ同長、18)体側に円形の模様がない、19)口角部に皮質突起がない(写真中段左)、20)吻は前に突出せず、上唇前縁を被わない(写真中段左)、21)尾鰭後縁が丸くない、22)胸鰭上縁の軟条は遊離する(写真下段右の赤丸)、23)体側に太い黒色横帯がある、24)頭部に黒色線がある(写真中段左)などの形質から、キヌバリに辿り着くことを確認。また今回の魚は神奈川県逗子付近で釣り上げられたものだが、確かに体側の黒色帯は6本と「太平洋型」であった(ちなみに「日本海型」のものはこの黒色帯が尾柄付近にもう1本あり、計7本であるとのこと)。

職場の関係者が釣りの獲物を「魚のサカナ」の標本用に提供してくれたもの。小型サイズのものが1匹だけということで今回は食していないが、ネット検索してみたところ、能登の「遠藤清一商店」では「海ごりの佃煮」として市販されているとのこと(直リンが何故か機能しないので、以下のURLをコピー&ペーストして下さい:http://notoshop.jp/SHOP/027.html)。こちらは「日本海産」ということで、7本の黒色帯をもった個体が期待できそうであるが、そもそも佃煮になった後にも黒色帯が判別できるのだろうか?

【注】「日本産魚類検索 全種の同定 第2版」には「亜科」表記はない。