253: ギンイソイワシ
トウゴロウイワシ目トウゴロウイワシ科ギンイソイワシ属
学名:Hypoatherina tsurugae (Jordan and Starks)
英名:Cobaltcap silverside [原]
神奈川県逗子付近の釣りもので、全長約13cmの抱卵した雌個体から摘出した「魚のサカナ」。右側の標本は、除肉/洗浄の途中で肩甲骨と烏口骨の結合部が折れてしまったので修復してある(この属の魚の「魚のサカナ」は変な方向に力を入れてしまうと、この部分が簡単に折れてしまうので要注意)。「銀磯鰯のギンイソイワシ」は、以前紹介したトウゴロウイワシのものと同様に、非常に透明感のある「魚のサカナ」で、肩甲骨孔が肩甲骨と烏口骨の結合線に接しているなどの特徴を共有しているが、1)全体的に左右方向に圧縮されたような形であること(例えるならば「体長」がより短く「体高」がより高い)、2)肩甲骨の先端が丸みを帯びず、鈍角的ながら突出すること、3)肩甲骨孔が細長く開き、肩甲骨の上縁近くまで伸びること、4)烏口骨の「開き」のタープ様部分の下縁が外側に広がることなどを相違点として挙げることが出来る。
写真上の左側の標本(完全なもの)を骨の両側から撮影。「魚のサカナ」の反対側(写真右)の烏口骨付け根付近も平たく広がっている。
「日本産魚類検索」の「同定の鍵」を辿り、1)口裂は斜め(写真中段左)、2)主上顎骨は口角のわずか後方に達し、後縁は膨出しない、3)縦列鱗数は46(「鍵」的には「50以下」)、4)眼窩上縁や眼隔域は骨質(写真中段左右)、5)上唇を除く吻前縁は直線状(写真中段右)、6)頭部に小鱗列がない(写真中段左右)、7)下顎後部は明瞭に高い(写真下段左/非常に分かりにくい)、8)体高は低く、臀鰭起部から尾柄にかけて細くなる、9)肛門(写真下段右の赤丸)は腹鰭後端(同青線)よりも後方で、第1背鰭直下に開孔する(下の【参考】も参照のこと)ことからギンイソイワシであると判断。標準和名に「イワシ」と付くが、いわゆるイワシの仲間(マイワシ/カタクチイワシ/ウルメイワシなど)とは遠縁の魚なので誤解なきよう。
これも職場の関係者が釣りの獲物を標本用に提供してくれたもの。今回は一部を刺身にして試食。トウゴロウイワシと同様、透明感がありコリコリとした歯触りの良質な身質。トウゴロウイワシを横に並べて食べ比べた訳ではないが、同じくらい旨味は多いように思われた。美味。
【参考】写真下は以前紹介したトウゴロウイワシを腹側から撮影したもの。肛門(赤丸)が胸鰭の間に開孔していることが分かる。