新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

【番外編】チチブサワラ(化石種)

スズキ目サバ亜目サバ科サバ亜科サワラ族サワラ属
学名:Scomberomorus chichibu Uyeno, Sakamoto and Sakamoto
英名:不明

2011年夏休みに家族で訪問した「埼玉県立自然の博物館」に復元模型(写真下)と共に展示されていた、埼玉県秩父郡小鹿野町般若の約1,500万年前の地層から発見された新種「チチブサワラ」の化石の複製品だが、幸運なことに「秩父鰆のチチブサワラ」の部分がはっきり確認できたので【番外編】としてご紹介。ちなみに「自然の博物館」は平成23年9月1日〜平成25年1月11日まで施設工事のため休館になるとのこと。それに伴ってこの複製化石もしばらく見ることが出来なくなるはずだが、実は写真右の『産状図』では肩甲骨の位置が間違って示されている(正確には肩甲骨孔の開いている骨を示すべき)ので、休館期間中に要改訂かと。

さて「秩父鰆のチチブサワラ」の形を、現生のサワラのものと比較すると、横方向に丸みを帯びながら伸びる肩甲骨を除いてはあまり似ているように思われない。また肩甲骨に関しても、肩甲骨孔の大きさはかなり異なっている。特に顕著な違いは烏口骨上方の『背鰭』部がチチブサワラのものでは非常に低いことだが、これは発見された化石では失われてしまっていたのか、そもそもこのような形なのかが全く分からない(ちなみに下記の原著論文にも「肩帯」に関しては非常に簡潔な記述があるのみ)。

とは言うものの、下のリンク先などによると、チチブサワラの頭蓋骨には、現生のサワラ属の中で最も原始的とされるウシサワラ Scomberomorus sinensis のものと共通する形質が認められるとのこと。将来的にウシサワラの肩帯部分を入手することが出来たら、両者の「魚のサカナ」の形を是非比較してみたいものである。

ちなみに、この化石の発見の経緯などは、埼玉県立自然史博物館 自然史だより 第26号(1995.3)「新種チチブサワラの化石発見−よもやま話−」に詳しい。またチチブサワラを「新種」として報告した論文:Uyeno, T., Sakamoto, K., and Sakamoto, O.. Scomberomorus chichibu, a New Miocene Scombrid Fish from Japan (Pisces, Perciformes), Bulletin of the National Science Museum. Series C, Geology & paleontology 20(4), 149-155 (1994) のPDFはこちらからダウンロード可能。論文中に「秩父鰆のチチブサワラ」の形がより分かりやすく、骨の位置も正確に示したイラストあり。以上ご参照頂きたい。

ということで、しばらく更新をお休みしていたこの「図鑑」ですが、これからまた少しずつ新しい「魚のサカナ」を紹介して行きたいと思います。お楽しみに。