新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

298: ヌマガレイ

カレイ目カレイ亜目カレイ上科カレイ科カレイ亜科ヌマガレイ属
学名:Platichthys stellatus (Pallas)
英名:Starry flounder [原], Emerywheel, Grindstone, Long-jaw flounder

通名カワガレイ(川ガレイ/岩手など)、ゴソガレイ(北海道)など。北海道産の全長約30cmの活け〆抱卵雌個体から摘出した「魚のサカナ」。上が有眼側、下が無眼側の標本。

有眼側(左)および無眼側(右)の標本を、拡大して写真上とは反対側から撮影。「沼鰈のヌマガレイ」は、一見してカレイ目の「魚のサカナ」であると判断できそうな形であるが、これまでに摘出/紹介してきた他のカレイ科の「魚のサカナ」といざ比較してみると、実はどの標本ともあまり似ていない独特のもの。肩甲骨には放射状に太めの筋が入り、肩甲骨孔は小さめ、烏口骨の『背鰭』部は三角形に盛り上がり、『嘴』部はスラッと細長い(特に有眼側)。



ヌマガレイはいわゆる「左ヒラメに右カレイ」の法則の例外であり、日本近海に生息しているものは全てが体の左側に眼がある(ただし日本近海以外でに生息するものでは、場所によって「右ヌマガレイ」の出現頻度が変わるとのこと/参考サイト:マルハニチロホールディングス「おさかなギャラリー」ヌマガレイ)。今回の個体は北海道産であることから、「検索」的には 1)眼が体の左側にあることが確認できればヌマガレイであることが確定する。念のため「新訂原色魚類大圖鑑」に記載されている、2)口は小さく相称系、3)上顎後縁は下眼前縁下に達する、4)歯は門歯状で1列に並ぶ(写真下段右)、5)皮膚は粗雑(写真中段左)、6)背鰭と臀鰭基底に沿い骨質隆起線がある(写真下段左)、7)側線は胸鰭背方でゆるく湾曲する(写真中段左右)、8)体色は有眼側が暗黄緑色で、背鰭/臀鰭/尾鰭の両面に黒色帯がある(写真下段左)などの形質も確認した。ちなみにヌマガレイは、産卵場所/時期が重なるイシガレイとの自然交雑個体(かっては新種「おしょろがれい」とされていたことも)の存在が知られているが、この場合は両者の中間的な形質を示し、眼の位置も左右バラバラになるとのこと。

2011年12月に八王子総合卸売センター内、高野水産で購入(当日はキロ1,000円/0.45kg)。箱書は上記した通り「ゴソガレイ」。今回は活け〆個体ということで刺身に挑戦(ただし汽水/淡水域にまで入ることが知られているカレイなので、寄生虫を持っている可能性は否定できない。生食する場合は自己責任で)。非常にキメの細かい半透明の身で、口にするとコリコリとした食感。旨味も少なくない。美味。ネット上の情報では「不味」との記述も散見されるが、鮮度や季節に大きく左右されるのかも知れない。また有眼側/無眼側を食べ比べたところ、これまでに試してみた全てのカレイ類同様に、無眼側の方がより旨味が多いように思われた(有眼側の刺身にはわずかながら後味に「クセ」の様なものを感じた)。更に一部をフライにしてみたところ少々パサ付いてしまった。火を通す料理にはあまり向かないという可能性も(要確認)。