新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

314: クロガレイ

カレイ目カレイ亜目カレイ上科カレイ科カレイ亜科マコガレイ
学名:Pseudopleuronectes obscurus (Herzenstein)
英名:Black plaice [原] (FishBaseに英名表記なし)

北海道産の全長25cmの雌個体から摘出した左右の標本。上が有眼側、下が無眼側の「魚のサカナ」。

有眼側(左)および無眼側(右)の標本を、写真上とは反対側から拡大して観察。「黒鰈のクロガレイ」もカレイ/ヒラメ類の「魚のサカナ」であると一見して予想できる形状で、全体的な特徴は同じマコガレイ属のものに比較的良く似た印象。とは言うものの、これまでに紹介したものの中に「酷似」した形状のものはやはりなく、特に無眼側の先端下部が少々突出しているのは独特である。また後述する通り、クロガレイの外見はクロガシラガレイのものに酷似しているが、「魚のサカナ」の各パーツ間ではさほど似ていないのが面白い(もちろん全体的な形状は似ている)。



「日本産魚類検索」のカレイ科の同定の鍵を辿り、1)眼は体の右側にある、2)有眼側の体にイボ状突起がない(写真下段左)、3)有眼側の鰓孔上端は胸鰭上端より上(写真中段左)、4)歯は門歯状で有眼側での発達が悪い、5)口は小さく頭長は上顎長の3.2倍以上、6)体は楕円形、7)背鰭は59軟条、臀鰭は47軟条、8)体は鱗に被われ、石状骨質板はない、9)眼上に鱗がない、10)側線は前方部で上方に湾曲する(写真下段左)、11)眼の後方に角状の骨質突起がない(写真中段左の赤四角)、12)背鰭・臀鰭の有眼側・無眼側に数本の黒色帯がある(写真中段右)、13)尾鰭はほぼ一様に黒い、14)尾鰭後縁は白くない(写真下段右)、15)側線の胸鰭上方湾曲部は低い、16)鰓蓋下部に小皮弁がない(後述)などの形質からクロガレイであると判断した。

八王子総合卸売センター内、総市水産で購入(2012年2月/当日は5匹で400円)。鮮度的なこともあり今回は煮付けと唐揚げに。煮付けにすると、少々身が崩れるものの身離れは悪くない方。旨味は少なくない。また煮付けた卵巣もしっとりとしており、味自体も結構なもの。かなりの美味。唐揚げは、しっとりする程度に揚げたもの、カラッと揚げたものの2種を試したが、共に美味。特にパリパリしたひれ部分は「ビールにぴったり」と言えるもの。

【注】2000年発行の「日本産魚類検索」(中坊編)や「WEBさかな図鑑」では、属名はツノガレイ属、学名はPleuronectes obscurus Herzensteinとなっているが、この学名はFishBaseではシニアシノニム扱い。また2005年発行の「新訂原色魚類大圖鑑」では属名が「プセウドプレウロネクテス属」となっている(ちなみに"Pseudo-"の部分(「偽」という意味)は、英語の発音では「シュード」になるはず)。

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【参考】クロガレイとクロガシラガレイの見分け方

本稿のクロガレイと、以前紹介したクロガシラガレイPseudopleuronectes schrenki (Schmidt))の外見は酷似しており、実際「黒ガレイ」などと箱書きされたトロ箱の中に両者が混在していることも多い模様(つまり漁師・漁協などの出荷側および市場も両者を区別していない、もしくは区別できていないということ)。ということで両者を区別する方法を参考までに列記してみたい。ちなみに比較用のクロガシラガレイの写真は2010年5月に入手した個体のもの。

【尾鰭】

クロガシラガレイ(写真右)の尾鰭軟条部先端は多少なりとも白くなる(個体によってはもっとはっきりと白い)が、クロガレイ(写真左)の同じ部分は白くならない。

【側線】

クロガレイ(左側)では、側線上方の湾曲部は比較的低く、直走部を結ぶライン(赤線)と湾曲部の頂点(緑線)の間には斜め方向に鱗4枚ほどの幅しかない。一方クロガシラカレイ(右側)では、側線上方の湾曲部は比較的高く、直走部を結ぶラインと湾曲部の頂点の間には鱗7枚ほどの幅がある。これらの側線形状の違いは店頭でも十分見分ける事が可能なはず。

【鰓蓋下部の表皮弁】

クロガレイ(左)とクロガシラガレイ(右)の鰓蓋下部の様子。北海道立水産試験場が1990年に発行した「北水試だより第11号」に掲載されている『クロガシラガレイとクロガレイの見分け方』(執筆:石野健吾氏/PDFのダウンロードはこちらから)によると、観察したクロガシラガレイ約1,000匹の内、黄色または黄白色の表皮弁(写真右の赤四角)を持つ個体は雌雄ともに50%以上であったが、同時に観察した約150匹のクロガレイの全てがこの表皮弁を欠いていたとのこと。つまりこの表皮弁が確認できれば、その個体はクロガシラガレイであると同定できることになる。

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