新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

251: ニベ

スズキ目スズキ亜目ニベ科ニベ属
学名:Nibea mitsukurii (Jordan and Snyder)
英名:Blue Drum [原], Honnibe croaker, Nibe croaker

神奈川県横須賀市長井漁港産の全長約22cmと小型の雄個体(白子持ち)から摘出した左右の「魚のサカナ」。「鮸/鰾膠のニベ」は、これまでに摘出/紹介してきた他の大型(=現時点でシログチのものを除く)のニベ科の「魚のサカナ」と烏口骨の『嘴』部先端が矢印のように太くなるという共通の特徴を有しているが、その中では肩甲骨孔が卵形で最も大きい。また肩甲骨/烏口骨本体と『嘴』の結合角はコイチのものと、烏口骨の『背鰭』や『嘴』部分の形や、烏口骨『嘴』部分下方の湾入部の形(ほぼ三角形)はクログチのものと良く似ている。写真右は写真左の右側の標本の拡大図。クログチのものとは異なり、烏口骨の『背鰭』部に孔は開いていない。

ニベの耳石は大きく、この個体のもので左右約1cmもある。以前紹介した極近縁種のコイチでは、全長約45cmの個体で耳石が約1.4cmだったので、今回のニベのものは比率的には大きいと言える(ただし耳石の成長率と魚体の成長率が必ずしも相関するとは限らないが)。



「日本産魚類検索 全種の同定 第2版」のニベ科の魚の「同定の鍵」を辿り、1)後頭部に骨質突起がない(写真中段左)、2)臀鰭は基底が短く2棘7軟条、3)下顎に髭がない(写真中段右)、4)下顎の感覚管孔は「5」で先端孔は大きい(写真中段右)、5)下顎の内列歯は外列歯より大きい(写真下段左)、6)背および臀鰭膜は鱗に被われない(写真下右)、7)体側に白色縦帯も暗色縦帯もない、8)体に尾柄部まで到達する斜帯があり、体側上方のものは乱れない(写真下段右)、9)尾鰭後縁は尖る、10)胸鰭と腹鰭は黒くない(写真中段左)、11)上顎後縁は眼の後縁まで達しない(写真中段左)、12)第1鰓弓の鰓耙数は「22」(写真下左/上下の痕跡的なものもカウント)、13)相模湾産(コイチの生息域は関西以西で、相模湾には生息しない)という形質/産地からニベであると判断した。

長井漁港の長井水産直販店で購入。シログチ/ニベ混じりで盛られたトロ箱からほぼ同じサイズのものを1匹ずつ購入し(当日は100g60円/2匹で190円)、両者を塩焼きで味比べ。今回比較した個体では、身の固さに関してはニベの方が優れているが(シログチの身はかなり柔らかい)、ニベよりもシログチの方が旨味は多い。またニベの方は身の中に走る血管のせい(?)で、色も多少黒っぽく感じる。あくまで全長約22cmの個体で味を比較した場合であるが、個人(および我が家)的には、シログチ>ニベであった。

注:前者の「鮸」は「魚偏に免」。また後者の「鰾膠」はニベなどの浮き袋から作る粘着力の強い「にかわ」を「鰾膠(にべ、にべにかわ)」と呼んだことから。ちなみに諺の「にべもない」は、この強い粘着力から「にべ」が他人との親密関係、愛想、お世辞などを表ようになり、無愛想な様子を「にべもない」と言うようになったとのこと。