新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

250: メバチ

スズキ目サバ亜目サバ科サバ亜科マグロ族マグロ属
学名:Thunnus obesus (Lowe)
英名: Bigeye tuna [原], Bigeye tunny, Coffrey, Albacore

別名メバチマグロ、流通名バチ、バチマグロなど。千葉県銚子産の全長約60cmと【ダルマ】クラスの若魚から摘出。写真左は「カマ」部分を煮沸して除肉した段階(漂白および固定前)で、擬鎖骨に結合したまま撮影したもの。写真右は同じ標本を擬鎖骨から外し、オキシドールによる漂白および70%エタノールによる固定後に撮影したもの。まだ血液が骨の中に残っている写真左の状態と比較すれば、漂白/固定の威力は歴然である。さて、「目鉢(眼鉢)のメバチ」は、これまでに摘出/紹介してきたマグロ類(ビンナガキハダクロマグロ)の「魚のサカナ」の形に酷似しているが、肩甲骨孔(『眼』)が他のものよりも大きく見える。またこの標本では、調製時に烏口骨上方の『背鰭』から『嘴』部にかけての上縁の一部が割れてしまったのが残念。

反対側の標本(射出骨付き)の上部を拡大。左側が烏口骨。頑丈な射出骨の間に小孔が開いているのが確認できる。



メバチは最大で全長2.5メートルにもなり、成長してしまえば眼の大きさ(ちなみに「眼」が「鉢」のように大きいから「メバチ」)から他のマグロ類と区別することは比較的容易。ところが、幼魚/若魚の段階ではキハダに良く似ており、両者を見分けるのは実はなかなか難しい(ちなみに若いキハダでは第2背鰭/臀鰭がまだあまり長くなく、眼の大きさも比較的大きめに見える)。ということで、「日本産魚類検索」の『同定の鍵』を注意深く辿り、1)体は紡錘形で、断面は丸い、2)両顎歯は円錐形(写真下段左)、3)胸鰭は長く臀鰭後端まで達するが、小離鰭のある所までは達しない(写真中段右)、4)第1背鰭と第2背鰭は接近、5)側線は1本(写真中段右の赤矢印)、6)体は全て小鱗に覆われる、7)体側上半部は黒い、8)鋤骨に歯がある、9)尾鰭が暗色ではなく、また後縁のみが白いということもない、10)体側下部に横長の小判形白斑が密に分布しない(写真中段右)、11)鰓耙数は「27」(写真下段右)、12)第2背鰭と臀鰭は伸長しない、13)体側下部に体軸に垂直な数本の白線がある(写真中段右/キハダではこの白線が斜めになる)、14)体がずんぐりしており、この個体では体高が尾叉長の約29%(キハダは比較的体高が低く、この数値が25%以下になる)、15)眼が大きい(写真中段左)などの形質からメバチであると判断した(ちなみに店頭表示も「めばち」)。

八王子綜合卸売協同組合内・望月水産で購入した鮮魚(約3000円/匹)。今回は三枚(実際は背身と腹身に分けたので5枚)に下ろし、1/4身と脳天/中落ちはそのまま刺身に、1/4身は福岡の「ゴマサバ/ゴマアジ」(あるいは大分の「りゅうきゅう」)風のごまをたっぷり混ぜた「づけ」に、1/4身はコチュジャンとごま油を配合したタレを使い、ユッケ風の「づけ」にしてサニーレタス包みと山かけ丼に、残り1/4身はショウガ/ニンニクの風味を軽くきかせた照焼き風マグロステーキに、頭は2つに割ってカマ肉と共に酒蒸しに、血合い/胃/脊椎/ハラモ(ハラス)を中心とした残りの「あら」は味噌汁に、、、と、可食部分が多いこともあって、メバチ丸々1匹を家族3人で2日半に渡りたっぷり堪能。若魚ということで脂がたっぷり乗っているということはないが、逆に身自体が持つ旨味と、爽やかな風味を十分満喫できて大満足。今更書く必要はないと思われるが、どのように料理しても非常に美味い。