新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

240: ホシミゾイサキ

スズキ目スズキ亜目イサキ科ミゾイサキ亜科ミゾイサキ属
学名:Pomadasys argenteus (Forsskål)
英名:Spottysail silver grunt [原], Fine-spotted grunter-bream, Head grunt, Silver grunt, Silver javelin, Small-spotted grunter-bream, Spotted javelinfish, White-finned javelin fish

沖縄名ガクガク、チン(クロダイの仲間と混同?)。沖縄産の全長約30cmの雌個体から摘出した左右の「魚のサカナ」。これまで紹介してきたイサキ科の「魚のサカナ」の形がなかなか多様であったことからある程度予想(=期待)していたが、やはり「星満伊佐木/星溝伊佐幾のホシミゾイサキ」もかなり個性的な形。肩甲骨が比較的大きめで、その前部下方が丸みを帯びながら膨出するが、大きめの楕円形の肩甲骨孔が少々上の方に位置していることとも相まって、穏やかな表情をした『犬』の横顔のようにも見える。写真右は、写真左の左側の標本を反対側から撮影したもの。烏口骨本体は左右方向に比較的短い。

とは言え「星溝伊佐木のホシミゾイサキ」の最大の特徴は、烏口骨の『嘴』の先端部分が「矢印」のように太くなっていること(緑四角)。このような形状はクロサギクロサギ科)や、コイチクログチ(以上ニベ科)などの「魚のサカナ」でも見られたものだが、実際「星溝伊佐木のホシミゾイサキ」には、特に大型のニベ科の「魚のサカナ」との共通点を多く見出せるように思われるのだが如何だろうか。またこの標本に関しては、赤丸で示した場所に数個の極小孔が開いている。

ホシミゾイサキの耳石は巨大(これも大型のニベ科の魚と共通する)で、今回のものは最長のところで約1.7cm。しっかり厚みもある。ちなみに写真左に写っている標本は、同サイズの別個体から射出骨付きで摘出したもの。



体色や体型からミナミクロダイやオキナワキチヌなどのクロダイ類と混同されることが少なくないようだが(実際今回の店頭表示も、本来ならばクロダイ/ヘダイ類を指す「ちん」)、上記したように現在の分類上はイサキの仲間(ただ、上記した「魚のサカナ」の特徴だけでなく、ホシミゾイサキの顔もニベ科の魚にかなり似ているようにも思われるのだが、、、/写真中段左)。また、かってはホシミゾイサキ(ミゾイサキ)の和名と学名の使用には大きな混乱があったそうだが、現在日本近海に生息していることが確実なのは、本稿のホシミゾイサキ Pomadasys argenteus (Forsskål) とスジミゾイサキ Pomadasys quadrilineatus Shen and Lin の2種類のみ(もう1種類のマダラミゾイサキ Pomadasys maculatum (Bloch) は高知県鮮魚店で売られていた冷凍魚を元にした報告で、「日本産魚」である確実な証拠はないとのこと)。そのため同定は比較的容易で、1)臀鰭は3棘7条(写真下段右)、2)下顎腹面に髭がない(写真中段右)、3)背鰭基部に前向棘がない(写真下段左/ちなみに背鰭は12棘13軟条)、4)下顎正中線に縦長の溝がある(写真中段右)、5)体側上部に多数の小暗色点がある(写真下段左)という形質を確認することで、ホシミゾイサキであると判断することができる。

泊いゆまち内・魚しげで購入(ほぼ同サイズ2匹で850円)。今回は刺身と皮付きのバター焼きに。特筆すべきは今回の「沖縄シリーズ」では数少ない、コリコリした食感のキメの細かい良好な身質。刺身では脂の甘みを強く感じ、また旨味成分も多い。かなりの美味。またバター焼きはこの魚の旨味を更に引き立たせる。非常に美味い。

(06/24/11 改稿)