新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

279: オキエソ

ヒメ目ヒメ亜目エソ科オキエソ属
学名:Trachinocephalus myops (Forster)
英名:Snakefish [原], Bluntnose lizardfish, Forster's lizardfish, Ground spearing, Painted grinner, Painted lizardfish, Painted saury, Sandspear, Short-headed lizardfish, Striped lizardfish

神奈川県城ヶ島の釣りもので、全長約12cmの個体から摘出した左右の標本。「沖狗母魚/沖鱠(エソは魚偏に曾)のオキエソ」は、以前紹介した同じ科のマエソのものとはあまり似ておらず、面白いことにカレイ科の「魚のサカナ」を思い起こさせる左右に細長い形(勿論エソ科とカレイ科に直接の類縁関係はないので念のため)。肩甲骨孔も細長くスリット状である。写真右は、写真左・右側の標本であるが、第4射出骨の除去前に反対側から撮影したもの。オキエソの「魚のサカナ」の第4射出骨は巨大な瘤(もしくは扇)のように膨出している参考。初見時はこれが烏口骨の上方突起のようにも見えたが、烏口骨本体との間に軟骨組織を介した接合部があったことから射出骨であることが判明したもの。

別の個体から胸鰭軟条と射出骨付きで摘出した標本の上部を拡大。胸鰭の軟条が、小さな第1〜第3射出骨と、一つだけ特別に巨大なな第4射出骨の上部に結合しているのを確認出来る。第4射出骨の下縁と烏口骨上縁の間に細長い隙間があることにご注目。



エソ科には同定が難しい魚も多いが、今回の魚は青と黄色の縦線が並ぶ特徴的な体色と、著しく短い吻からオキエソであることが一目瞭然。更にオキエソは世界でも1属1種であるので同定は容易。念のため「日本産魚類検索」を開き、1)鱗が体全体にある、2)腹鰭の外側(前側)の軟条は内側(後側)の軟条よりかなり短い(写真下段左)、3)口蓋骨歯は1歯帯(写真中段右)、4)吻は著しく短い(写真中段左)、5)臀鰭は基底が長く、2棘14軟条(写真下段右)などの形質からオキエソに辿り着くことを確認した。

職場の関係者が釣った個体を標本用に提供してもらったもの(何時もありがとうございます)。今回は食していないので味わいなどは分からないが、ネット上の情報によれば小骨はかなり多い模様。

注:「日本産魚類検索 全種の同定 第2版」ではヒメ目エソ亜目エソ科オキエソ属になっている。

【参考】1930年に出版された「The Primary Shoulder Girdle of the Bony Fishes」(Stanford University Press / Edwin Chapin Starks著)は、一部のみとはいえ現在Google booksで読むことが可能(興味ある方はこちらからどうぞ。)。その”family SYNODONTIDAE/エソ科”の項(pp. 17-18)には、アカエソ属キツネアカエソ Synodus foetens (Linnaeus) の「魚のサカナ」のイラストと説明が掲載されているが、やはり「第4射出骨が巨大である」旨が明記されており、またイラストからもそれが明白(ちなみにキツネアカエソは日本近海には生息しない)。以前紹介したマエソ属マエソの射出骨付き標本の写真を改めて見直すと、第4射出骨が残念ながら外れているようにも見えるので、将来的にマエソ属の魚の第4射出骨の大きさは要確認。