新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

288: コケギンポ

スズキ目ギンポ亜目コケギンポ科コケギンポ
学名:Neoclinus bryope (Jordan and Snyder)
英名:Moss fringehead [原]

神奈川県城ヶ島産の釣りもので、全長8.5cmの個体から摘出した「魚のサカナ」。ただし今回は確実に実体顕微鏡の助けを借りるべきサンプルであったようで、片方の標本は肩甲骨と烏口骨が外れてしまい、紹介そのものが不可能に。本稿で辛うじて紹介できた上の標本(上の写真はその両面)も、標本調製時に烏口骨の『嘴』部の一部(烏口骨下方の少し抉れている部分)を針の先で傷つけて破損してしまった。また烏口骨の『背鰭』部分が折れてしまった可能性もゼロではない。正に「後悔先に立たず」であるが、今回は「大体こんな形」ということでどうかご容赦頂きたい(当然別の個体が手に入ったら写真を入れ替える予定)。

ただ「苔銀宝のコケギンポ」の形自体は非常にユニークなもの。これまでに紹介してきた様々な「魚のサカナ」の中では、巨大な射出骨の下に小さめの肩甲骨が結合したようになっているのはハゼ科フグ科の「魚のサカナ」を、また射出骨の孔と肩甲骨孔が4つ並んでいるのはフグ科のものを何となく思い起こさせる。ただし標準和名ギンポのものとは全く似ていない

「苔銀宝のコケギンポ」の肩甲骨の前縁はかなり細い。



「日本産魚類検索」の同定の鍵を辿り、1)背鰭第1/第2棘間に黒点がある(写真中段左赤丸)、2)眼上皮弁は1列3対(写真中段右)、3)鰓蓋上部に黒色斑がない(写真下段左)、4)胸鰭が14軟条である(写真下段右)ことからコケギンポであると判断。ただし、形質3の「黒色斑の有無」に関してはあまり自信がないというのが正直なところ。実際、写真下段左では鰓蓋縁の外側に黒色斑があるようにも見える、、、ということで、今回の魚がアライソギンポである可能性を完全には否定できないことを念のため申し添えておく。またコケギンポの画像をネット検索してみると、非常に多くの水中写真がヒットするという事実から推察すると、どうやらダイバー達に非常に人気がある模様。

この魚も職場の関係者から標本用に提供してもらったもの。食べていないので食味等は不明

確かに頭に「苔」が生えているようにも見える。


【注】非常に紛らわしいが、標準和名ギンポスズキ目ゲンゲ亜目ニシキギンポ科に属する魚(つまりギンポギンポ亜目に含まれない!)。故にスズキ目ギンポ亜目コケギンポ科に属するコケギンポとは亜目のレベルで異なるため、両者の「魚のサカナ」が全く似ていなくても問題はないと言える。