新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

289: ヒラソウダ

スズキ目サバ亜目サバ科サバ亜科マグロ族ソウダガツオ属
学名:Auxis thazard (Lacepède)
英名:Frigate mackerel [原], Frigate tuna, Leadenall, Bullet mackerel, Mackerel tuna

静岡県伊東産の全長約33cmの個体から摘出した「魚のサカナ」。オキシドールによる漂白済み。「平宗田のヒラソウダ」は、これまでに紹介したサバ亜目の「魚のサカナ」の中で、やはり同じソウダガツオ属のマルソウダのものに酷似しており、実際に両者を並べたとしてもその形の違いを指摘するのはかなり難しいのではないだろうか。

ソウダガツオ類の「魚のサカナ」の烏口骨の『嘴』部分は、「折り目」が入ったような形になっている。



「日本産魚類検索 第2版」を開き、1)体は紡錘型であまり側扁しない、2)両顎歯は微小(写真中段左の黄丸)、3)腹鰭の大きさは普通、4)第1背鰭と第2背鰭はかなり離れる、5)小離鰭数は8(写真中段右)、6)尾柄中央部に顕著な隆起がある、7)腹鰭間突起は大きい、8)体は胸甲部を除いて無鱗で、胸甲部(有隣域)は第1背鰭と第2背鰭の中間で急に狭くなる(写真下段右の赤矢印)、9)鰓蓋上端の暗色域は頭部背面の暗色域から離れる(写真下段左の赤丸)などの形質を確認してヒラソウダであると判断。ちなみに良く似たマルソウダとは、形質8と9(マルソウダは、胸甲部/有隣域が第2背鰭付近まで伸び、鰓蓋上端の暗色域が頭部背面の暗色域と繋がる)で見分けられる。

伊東駅前にあるグルメシティー伊東店で購入したもので、店頭表示は「朝獲れ・宗田ガツオ」(当日は何と98円/匹)。3枚に下ろしてみると、マルソウダ程ではないが血合い部分はやはり多い。ただし鰓は鮮紅色で眼も黒々していたので、店頭表示通り新鮮な個体であろうと判断して、今回は刺身とタタキ(土佐造り)に。「旬」であったこともあり、程よく脂が乗り旨味も多く大変な美味。同席した人の中からは「そこらで買うカツオよりも遥かに美味い」という意見も聞かれた程。タタキにすると香ばしさが加わるが、刺身とタタキのどちらが良いかに関して好みは分かれた(ただし「どちらも美味いが、どちらかと言えば」という意味なので念のため)。また大きめの血合い部分の有る無しもかなり好みが分かれたが(小学生の息子は「ちょっと生臭いから無い方が良い」とのこと)、中毒のことを考えると取り除いてしまった方がより安心ではある。ちなみに個人的には普通の刺身に多少血合い部分が付いているくらいが一番美味いと感じた。また「あら」で作った味噌汁も美味。この味(と可食部の多さ)で1本100円程度というのは、基本的に海に近い場所限定であるとは言え、今時信じられない位の「お買い得」であると思う。

【注】古くなったソウダガツオ類にはヒスタミン中毒の恐れがあり、またヒスタミンは熱によって分解されないそうなので、できる限り新鮮な個体だけを食べるべきである。また一般にマルソウダの生食は避けた方が良いとされているのでご注意頂きたい。